はじめに

今回は、「同じような商品とオーダーメイドの罠」というテーマでお送りしていきます。

以前、広告代理店と関わりがあった際に、その企業の経営者が、

「事業として広告の枠が売れれば売れるほど、事業としては成立するのですが、広告を使ってくれているお客さんが、うまくいかずに広告を撤退するということが、相次いでいる」

というお話をしてくれたことがありました。

この方の話を聞いた時、本来であれば、当該企業の経営者としては、事業収益を上げることができているので、問題ないのですが、

やはり「顧客に役に立てていない」ということに、引っ掛かりを覚えるという点に、経営者としてのある種の矜持を感じました。

「自分だけが儲かれば良い」という世界で、自らの事業収益はしっかりと結果を残しつつ、「やはり顧客の役に立ってこその事業」という本来のあるべき姿を追求する経営者から、

今回は、「その事業がうまくいかない理由、長続きしない理由」という点について、考察を加えていきたいと思います。

「無いサービス」は無いのに、解決されていない問題も残る理由。

正直なところ、現在の世界において、「無いサービス」はほとんどありません。

人が思いつくことは、一通りサービスとして存在していて、そのサービスに納得がいかなければ、他の代替サービスも、ほとんどの場合見つかります。

また、まったく同じサービスの代替品が見つからなかったとしても、似たような商品やサービスに視野を広げていくと、さらに同じようなものが存在していることがわかり、

もはや「無いサービス」は無いという状態が、ほとんど完成していると言えます。

しかしながら、どこにでもある、何でもあるように見える昨今であっても、未だに解決のなされていない問題もまた、多く存在しています。

「無いサービス」は無いという状態なのに、解決されていない問題があるのは、一体なぜなのでしょうか。

この問題について考えるにあたっては、冒頭に出てきた、広告代理店についても、同じことが言えます。

広告代理店は、探せばいくらでもあり、広告媒体に関しても、探せばいくらでもあります。

そして、広告の出し手は、好きな媒体に、好きなだけ広告を載せることも、事実上可能な状態です。

しかしながら、広告を出せば出すほど、ジリ貧になり、広告に資金を投じていけば行くほど、厳しくなるから、撤退していく企業も多く存在するのです。

同時に、この広告代理店の事業に関しても、同じことが言えて、

いくら現時点では、広告枠が埋まって、事業収益が成り立ったとしても、ゆくゆくは広告を出すことを辞めた事業者と、同じ末路をたどることになります。

なぜなら、その広告代理業は、顧客に資金を供出させるだけで、顧客の役には立っていないからです。

では、「顧客に役に立てていない」ということに、引っ掛かりを覚えた経営者たちは、何に目を向けていたのでしょうか。

次に、この点について見ていきたいと思います。

画一化された商品と、顧客に合わせたサービス。

彼らが見ていたのは、「もともと始めた時の原点」です。

そもそも事業が成り立つためには、その事業を行う人と、それに資金を出す人が必要です。

そして、既存事業を回している人ほど、自らの達成予算とか、売る商品のほうにフォーカスしていて、顧客を見失っているケースが多いです。

いつからか、顧客という実態から考えて、事業のサービスや商品を組み立てるのではなく、自らの事業サービスや商品から、顧客にどう売るかを考えてしまっている状態です。

本来であれば、顧客の変化や要望とともに、こちらの商品やサービスを含めた、事業内容そのものを変化させるくらいのスタンスが求められているのに、

売る商品やサービスが最初から決まっていて、それをどれくらい売る必要があるかも決まっている状態に陥っています。

では、顧客の要望や実態に合わせて、オーダーメイド的に、顧客ごとに、商品やサービスを作っていくことで、顧客の問題を解決に導くことができるのかどうか。

最後に、この点について考察を加えていきたいと思います。

画一化された商品でも、オーダーメイドでも解決できない問題。

結論から書いていくと、基本的に、画一化された商品でも、オーダーメイドで、顧客に合わせた商品づくりをしても、解決できない領域の問題が存在しています。

これは、なぜなのでしょうか。

いくつかあるうちの代表的なものを例に挙げると、まず「顧客が解決したいと考えている問題」が、そもそも間違ってしまっている場合があります。

問題だと思っている問題そのものが、そもそもその点ではない、ということです。

加えて、企業に求められるサービスや商品が、基本的には「非定型」であることに由来していると見ています。

これは、具体的に提供する商品に、形があってもなくても、実際に提供しているのは、「非定型」の形無いものが、ほとんどであるからです。

どういうことかと言うと、例えば、立ち食いそば屋は、何を提供しているでしょうか。

300円くらいの安いそばと、食べるスペースを5分くらい貸しているようにも見えますが、顧客は、洗練された手打ちそばや、そば粉100%の美味しいそばを求めているのでしょうか。

そんなわけないですよね。

むしろ、注文してから30秒くらいで、そばが出てきて、さっと食べて買えることができれば、それで問題ないはずです。

しかしながら、事業の歯車が狂ってしまっているところは、こうした安い立ち食いそば屋で、高級なそばを出そうとして、コケてしまっていることも多いのです。

以前、関わらせて頂いた飲食店でも、店主の方は、回転率を上げるために、安めに値段を設定したセットコースを推していたのですが、

実際に、調べてみると、そのセットコースの3倍以上するお誕生日コースが、一番売れていました。

顧客は、安いセットコースなど求めておらず、大切な人と時間を過ごす、そのために、そのお店の一番高いサービスを利用されていたのです。

問いが間違ってしまっていると、最初からズレてしまい、本来やるべきことから逸れてしまいがちですが、実際にふたを開けてみると、「そんなものは求めていない」ということがよくわかります。

確かに、画一化された商品では解決できない問題の代表例とも見て取れますが、同時に、オーダーメイドにしたからといって、解決できる種類の問題でもないのです。

顧客の求める「非定型」を、ただ単純に、オーダーメイドと取り違えてしまうと、

顧客はそもそもそんなものを求めていないのに、提供する側の経営者が、顧客が求めていない答えに、行き着いてしまう危険性をはらんでいると言えます。

おわりに

さて、今回は、「同じような商品とオーダーメイドの罠」というテーマで、お送りしてきました。

画一化された商品では、課題を解決することは難しいのは周知の事実だとして、オーダーメイドサービスもまた、課題を解決に導く場合と、導かない場合があることについて、考察を加えてきました。

「じゃあ、どうすればよいのか」という点が残されているからこそ、世の中にあふれる商品やサービスでは解決しきれない、新しい商品やサービスが生み出され続けると言えます。