この記事では次の内容をまとめています。
・業務の属人化とは?
・業務の属人化が発生する原因
・業務の属人化を解消する方法
脱属人化したい、属人化を防止したいという方が知っておくべきことを全てまとめました。
業務の属人化とは?
属人化とは、ある業務が特定の社員に依存している状態のことです。
その人しか仕事の進め方やノウハウ・知識を知らず、他の社員はその業務を行うことはできません。
これまで、日本では同じ会社に定年まで勤めるケースが多く、仕事が属人化しても大きな問題になることはあまりなかったかもしれません。
しかし、現在は終身雇用が当たり前ではなくなりつつあり、転職をする人も増えているため、属人化は企業にとって大きな経営リスクとなります。
そのため、業務を標準化し、プロセスや知識を組織に残す重要性が高まっています。
業務の属人化が発生する原因4つ
この章では作業の属人化が発生する主な原因をご紹介します。
①仕事の専門性が高い
②多忙でノウハウを共有する暇がない
③企業がノウハウの共有に価値を置いていない
④個人が情報を共有したがらない
仕事の専門性が高い
まず、作業の専門性が高いと属人化しやすくなります。
なぜなら、特殊な技術が必要な仕事や、長年の経験が求められる業務の場合、言語化やマニュアル化がしにくいため他の人に教えることが難しいからです。
さらに、こうした仕事はできる人が限られており、採用も難しいため、脱属人化のハードルはさらに高くなってしまいます。
多忙でノウハウを共有する暇がない
業務が忙しすぎて他人に情報共有する暇がなく、属人化が発生しているケースもあります。
多忙だと、目の前の仕事をこなすのに精一杯で、自分の業務をマニュアル化したり、他の社員を教育したりといった作業は後回しになります。
これが原因で属人化している場合、まずはその社員の業務量を減らし、時間の余裕を作ることが求められます。
企業がノウハウの共有に価値を置いていない
企業の風土や価値観が属人化の発生に影響を与えている場合もあります。
例えば、成果のみで社員を評価する企業では、社員はとにかく仕事で結果を出すことに集中していて「会社にノウハウを蓄積させる」という考えがそもそもないかもしれません。
一方で、情報共有を行うことに価値を見出し、評価の基準の1つにしている会社では、社員は積極的に自分のノウハウや知識を共有しようとするでしょう。
個人が情報を共有したがらない
そもそも社員が他の社員に対して業務に関する情報を共有したがっていないために属人化しているケースもあります。
情報共有に消極的な理由としては様々で、例えば次のようなものがあります。
- 現在の地位を脅かされたくない
- 「これは自分にしかできない」と思い込んでいる
- 仕事のやり方を他人に口出しされたくない
高いスキルを持っていて、会社に貢献していたとしても、このような考え方のままで居られると企業の経営リスクが高まってしまうため、対策を考える必要があります。
属人化のデメリット8つ
この章では属人化のデメリットをご紹介します。
①企業にノウハウや知識が貯まらない
②特定の社員が居ないと業務が停滞する
③作業効率の最適化が難しい
④サービス・製品の品質が下がる
⑤顧客満足度が下がる
⑥マネジメント層による正当な評価が難しくなる
⑦ミスやトラブルに気づかないリスクがある
⑧社員の負担が大きくなる
企業にノウハウや知識が貯まらない
業務が属人化しているということは、企業に仕事のノウハウや知識が蓄積していないということです。
属人化した業務を行っている社員が退職・休職すると、誰もその業務のやり方が分からず、途方に暮れてしまいます。
いつ社員が職場を離れると決断するか分からないからこそ、早めに脱属人化をするべきです。
企業としてリスクを避けるためには、属人化している業務に関する情報を社内で共有し、誰でもできるように標準化することが大切です。
特定の社員が居ないと業務が停滞する
代わりにできる人がいないため、属人化した業務を行っている当人が不在の際には業務が止まってしまいます。
例えば営業部の場合、ある社員が休みの日にその担当顧客から問い合わせがあった場合、他に誰もその顧客情報や営業の進捗情報を知らないため、担当社員が出勤するまで待ってもらうことになります。
このように、属人化によって納期の遅延や顧客対応の遅れなどが発生します。
作業効率の最適化が難しい
業務が個人に依存している場合、他の人がその作業をチェックしたり、改善提案をする機会が少なくなります。
結果として、非効率的な手順や無駄が放置されやすくなり、組織としての生産性はいつまで経っても上がりません。
サービス・製品の品質が下がる
担当社員が一人しかいないと、サービスや製品の質が下がっていてもなかなか気づくことができないリスクがあります。
また、属人化した仕事はマニュアルがないことも多く、品質が不安定になりやすいという特徴もあります。
顧客満足度が下がる
先ほども触れましたが、ある顧客の対応を特定の社員しか行えない状態では、その社員の不在時に対応スピードが遅くなり、対応できたとしても質が悪くなることがあります。
顧客から見れば「質の高いサービスを受けられない」と感じ、不満や不信感につながります。
結果として顧客の離脱リスクが高まります。
マネジメント層による正当な評価が難しくなる
上司やマネジメント層ですら各社員の業務内容を正確に把握していないため、仕事に対する適切な評価はしづらいです。
その結果、頑張っている社員が評価されなかったり、反対に過剰に評価がつくこともあり、社員が評価に対して不満を抱くこともあり得ます。
この状態を放置していると離職に繋がりかねません。
ミスやトラブルに気づかないリスクがある
特定の人しか業務の全体像を把握していない状態では、ミスやトラブルが発生しても周囲が気づきにくいです。
複数人で情報を共有していれば早期に発見・対応できたような問題も、属人化が進むと対応が遅れて重大な問題へと発展する可能性があります。
例えば、製品に不良があるにも関わらず、生産を続けてしまい、気づくのが遅く、大量の製品を回収しなければならなくなった・・・ということもあり得ます。
社員の負担が大きくなる
属人化された業務を任されている社員は、「自分しかできない」というプレッシャーを常に感じながら働くことになります。
すると、有給休暇が取りづらくなったり、長時間労働が常態化するなど、精神的・肉体的な負担が大きくなります。
その結果、体調不良になったり、精神的に追い込まれたりして、休職・退職に繋がることもあります。
属人化がメリットになる場合もある?
実は仕事の属人化にはメリットもあります。
まず、1つの作業を繰り返すことによってスキルが速く伸び、専門性が高くなります。
また、業務を一任されることによって、仕事にプライドを持ち、モチベーションが上がる効果もあります。
属人化が良いように作用する業務内容や職種もあります。
例えば、アニメーター・絵描きのようなクリエイティブな仕事や、短期的なプロジェクトです。
業務の属人化を解消すべき理由5つ
この章では企業が仕事の属人化を解消すべき理由をご紹介します。
①社員が退職・休職したときのリスクが大きい
②全員が同じクオリティの作業ができるようになる
③人材不足対策になる
④業務の効率化についてアイデアが出やすくなる
⑤新人の教育にかかる労力が減る
社員が退職・休職したときのリスクが大きい
属人化した仕事を請け負っていた社員が退職したり、休職したとき、社内にその業務ができる人がいなくなるため、混乱が生じます。
すると、納期遅延が発生したり、顧客対応ができなかったりと、企業の信頼に直結する問題になります。
そこで、脱属人化し、担当社員に万が一のことがあっても、すぐに他の社員が代わりに業務を行えるような備えをしておくことが大切です。
全員が同じクオリティの作業ができるようになる
一人の社員に依存していた仕事をマニュアル化すると、誰でも同じクオリティで業務ができるようになります。
すると、社員によって製品やサービスの品質が左右されることがなくなり、安定して供給され、顧客満足度が向上します。
人材不足対策になる
専門性が高く、限られた人材しかできなかった作業をマニュアル化し、誰でも再現できるようにすれば、採用できる人材の幅が広がり、人材不足対策にもなります。
業務の効率化についてアイデアが出やすくなる
複数の人間が業務に携わることで、作業内容の改善のためのアイデアが出やすくなります。
様々な視点から意見が出ることで効率化が進み、企業にとって大きなメリットとなります。
発見した課題や作業の無駄を積極的に共有するには、意見を出しやすい環境を作っておくことが欠かせません。
新人の教育にかかる労力が減る
属人化された業務は、やり方が言語化されていないことから、例え担当の社員でも教えるのに時間と労力がかかります。
一方で、事前に作業手順やノウハウを明文化しておけば、スムーズに教育が進みますし、新人もやり方をすぐに理解することができます。
業務の属人化を解消する方法3つ
この章では企業が業務の属人化を解消する方法をご紹介します。
①属人化した業務の方法を詳しく把握する
②マニュアルを作成する
③IT技術・ツールを活用して情報共有を促す
属人化した業務のやり方を詳しく把握する
まずは属人化している業務の内容を詳しく把握しましょう。
具体的にはこのような点を確認する必要があります。
- 作業内容
- 作業手順
- 作業時間
- 必要な技術
- 使用するツール
- 作業のコツ
他の社員でもやり方を再現できるようにするために必要な情報をとことん洗い出しましょう。
マニュアルを作成する
属人化していた業務内容をマニュアル化しましょう。
ここでのポイントはただ形にするのではなく、再現性のあるマニュアルにすることです。
新人が見ても行動に移せるように徹底的に作業内容を標準化しましょう。
そのためには細かく書くのはもちろんのこと、図、写真、動画なども用いると非常に分かりやすくなります。
また、仕事をする上での注意点まで載せておくとミスやトラブルの発生を抑制できます。
IT技術・ツールを活用して情報共有を促す
業務の属人化を解消するには、IT技術やツールの活用によって情報共有を促進することが有効です。
たとえば、クラウド型の業務管理システム、チャットツール、マニュアル作成ツールなどを導入することで、個人に依存していたノウハウや業務の進行状況をチーム全体で把握できるようになります。
こうした仕組みがあれば、引き継ぎやトラブル時の対応もスムーズになります。
属人化した業務をマニュアル化する方法5ステップ
この章では属人化した業務をマニュアル化する際の流れをご紹介します。
①作業の方法を詳しく把握する
②作業効率を最大化するやり方を探す
③トラブルの対処法を決める
④再現性のあるマニュアルを作る
⑤定期的にマニュアルの内容を見直す
作業の方法を把握する
まず、属人化している仕事のやり方を把握します。
実際に業務を行っている担当者へヒアリングをしたり、作業中の様子を観察・記録して情報を集めます。
このとき、作業を行う目的や判断基準なども把握することで、他の人が理解しやすいマニュアルの完成に繋がります。
曖昧な手順が出ないよう、徹底的に情報を洗い出しましょう。
作業効率を最大化するやり方を探す
属人化している業務について全体像を把握できたら、各プロセスの効率を最大化する方法を考えます。
属人化している業務ほど個人のやりやすい方法で進められていて、非効率なやり方になっているケースも多いため、複数人で検討しながら最適化を図ります。
- 不要な工程を削減する
- 作業にツールを導入する
など、効率化する方法は様々です。
トラブルの対処法を決める
仕事は常にスムーズに進むわけではなく、トラブルが発生することも。
そこで、ミスやトラブルが発生した際の対処法についても明記しておきましょう。
過去に起こった事例やその際の解決方法まで書かれていると非常に参考になります。
これにより、万が一のことがあっても一定のクオリティの対処を行うことができます。
再現性のあるマニュアルを作る
誰が見ても同じように作業できるマニュアルを作りましょう。
そのためには、専門用語を避け、図や動画などを交えて視覚的にも分かりやすくする工夫が必要です。
手順だけでなく、作業の意図や注意点も補足しておくと、仕事に対する理解が深まり、ミスの防止にも繋がります。
読み手目線で作成しましょう。
定期的にマニュアルの内容を見直す
マニュアルは一度作って終わりではありません。
定期的に内容を見直し、修正を繰り返すことで完璧なマニュアルに近づきます。
例えば、マニュアルを使って新人に指導したものの、上手くできていない、もしくはあまり理解できていなかった手順があれば、書き方を見直す必要があるでしょう。
また、業務内容の変更や追加があった際にも追記が必要です。
属人化を防ぐ方法
この章では企業が業務の属人化を防ぐ方法をご紹介します。
①積極的に情報共有が行われる企業風土にする
②新しく発生した業務を共有する仕組みを作る
積極的に情報共有が行われる企業風土にする
属人化を防ぐために重要なのが企業風土です。
自分が持つノウハウや知識を積極的に共有することが重視されており、実際に社員間での情報共有が盛んであれば属人化防止になります。
そのためには会社にノウハウを残すことに貢献した社員を評価する姿勢を示すことが大切です。
新しく発生した業務を共有する仕組みを作る
マニュアルを作成しても、日々、業務のやり方は変わりますし、新しい業務も出てくるもの。
そこで、新しく発生した業務について、気軽に共有できるような仕組みが必要です。
例えば次のような対策方法があります。
- ナレッジ共有ツールを導入し、新しい業務についてすぐに記録できる環境を整備
- 業務フローのテンプレートを用意
- 定期的に新しい業務について話し合う機会を設ける
属人化を防ぐべき業務4つ
この章では特に属人化を防止すべき業務の種類をご紹介します。
①バックオフィス業務
②トラブル対応・セキュリティ業務
③顧客対応
④自社の製品・サービスの説明
バックオフィス業務
総務、経理、人事といったバックオフィス業務は組織の安定した運営を支えている重要な業務。
業務が属人化し、担当者が退職や休職をすると、企業、取引先、顧客とあらゆる方面に悪影響を及ぼします。
トラブル対応・セキュリティ業務
セキュリティやトラブル対応はいざというときに迅速な対処が求められるもの。
初動が遅れると被害が拡大し、企業イメージが悪くなる恐れも。
トラブル対応の手順を決めておき、複数人が対処できる体制を作っておきましょう。
顧客対応
顧客からのクレームや問い合わせについて、担当のスタッフしか対応できないと、返事の遅れや対応の質のばらつきが発生する原因となります。
CRMツールやSFAツールを導入し、顧客情報や過去の対応履歴を一元管理すれば、誰でもスムーズに対応できる体制が整い、高い顧客満足度の維持が可能になります。
自社の製品・サービスの説明
製品やサービスの説明の内容が社員によってばらつきがあると、顧客は混乱しますし、企業に対する不信感を招きます。
誰が説明しても同じ情報が提供されるよう、事前に説明用の原稿を配布するなど、対策を行いましょう。
まとめ
属人化とは、ある業務が特定の個人に依存している状況を意味します。
属人化を放置していると、その社員が退職した際に会社にノウハウが残らず、混乱を招きます。
そこで、属人化している業務はマニュアル化するなど、標準化して誰でも行えるようにしておきましょう。