はじめに。

さて、今回のテーマは、

「その法人の年商は、その法人と関わる取引先が決める」を観察する。

です。

最近では、あまり言われなくなりましたが、「その人の年収は、その人間の周りの人間が決める」という言説は、今も変わらず、この傾向があると見ています。

理由は、普段関わっている人間と、どのように関係を結んでいるかで、その人間の立ち位置が決まってしまうからです。

これは、個人に限ったことではありません。

むしろ、法人にこそ、求められる姿勢と言えます。

言い方を変えれば、「その法人の年商は、その法人と関わる取引先が決める」ということです。

もちろん、だからと言って、大手とだけ関われば良いというわけでもありません。

それは、これから記していく理由にあるからです。

今日は、そこの部分から考察していきたいと思います。

「その法人の年商は、その法人と関わる取引先が決める」とは、そもそも何か。

一見すると、ビジネス書でもよく言われているような内容です。

「その人の年収は、その人間の周りの人間が決める」から、普段から関わる人を変えて、自分より上のステージの人たちとどんどん関わって、自分のステージをあげましょう。

そういった話が、よくされがちです。

ですが、実際には、反対であるようにも見えます。

つまり、周りの人間が変わるから、その人自身に変化が起きるのではなく、その人自身に変化が起きるから、周りの関わる人間が変わるのです。

言い換えれば、「その人の変化」が先にあって、初めて周囲の変化を実感できると言えます。

理由は、「その人の変化」無くして、周囲の人間は変わることがなく、「その人が変化した先に」、その周囲の変化が起こるからです。

そもそも、自分を変化させたいから自分より上のステージの人と関わりたいと思っても、自分より上のステージの人が、(変化前にある)その人に関わるメリットは存在しません。

これは、法人でも同様です。

その企業が、今までしっかりお仕事をされてきたけれども、さらにその上に行きたいと考えたとします。

ですが、その法人より、上のステージにいる法人は、その変化する前の法人と関わるメリットが存在しません。

個人の場合であれば、現在ある程度の立場にある人が、お金にも時間にも余裕があるので、若い人を後進を育てるという意味合いで、自らよりステージの低い人と関わる場合は存在します。

ただ、法人の場合、これはほとんどの場合、起こり得ません。

法人間で起こりうるとしたら、それは、法人格(会社)を持っている個人同士がつながって、事業を継続して軌道に乗せている側が、これから軌道に乗せようとしている法人(個人)を、応援するような場合です。

そのため、一般的には、今述べたように事例ではない限り、法人が法人を育てようとすることはないと言えます、

よって、企業が現在のステージよりも上に行こうとして、関わる企業を変えようとしても、自身の企業が成長しないことには、関わる周囲の企業も変化しないということになります。

監視社会において、監視しているのは他社ではなく自社。

さて、ここまで「その人の年収は、その人間の周りの人間が決める」というところから、法人も同様で、「その法人のステージは、その法人の周りの企業が決める」というお話をしてきました。

そして、同時に、「周囲を変化させるから当事者が変わるのではなく、当事者が変わるから結果として、周囲が変化する」という話もお伝えしました。

理由は、周囲の変化に先立って、当事者の変化がなければ、より上のステージにいる法人(個人)は、後進育成や応援・支援などの一部の場合を除き、関わるメリットが存在しないからです。

特に、この傾向は、法人格では顕著で、法人が別の法人を育てようとすることは、ほとんどの場合起こり得ません。

そのため、周囲の変化が先ではなく、当事者の法人や個人が上がって行かないことには、周囲の法人や個人も変化しないと言えるのです。

では、そもそもなぜ「周囲を変化させるから当事者が変わる」という言説が存在するのでしょうか。

次は、この部分について、考えてみたいと思います。

話は少し変わりますが、現在では、至るところに、防犯カメラが設置されています。

あれだけのカメラ台数を、どのように管理しているかは分かりませんが、現在やっている監視業務は、一部を除いて、人工知能の監視等に置き換わっていくのかもしれません。

ですが、ここで考えたいのは、どのように監視しているかではなく、それによって、人間にどのような変化をもたらしたのか、という点についてです。

「監視」という言葉を用いると、どうしても他者から見られていると、受け止めてしまいがちです。

これは、法人でも同じで、業界の他の企業の動向や、業界全体の流れ、などなど、必ず他社を意識した企業経営をしています。

ただ、これは、同時にある視点を生み出しています。

それは、「業界の他の企業はこうだから、自分自身の企業はこれで行く」という、自社の視点です。

つまり、「業界がこうだから、他社はこうだから」と、自社を自社の視点で縛ってしまっているのです。

この状態は、「自社が自社を監視していて、自社を自由にさせない」というようにも表現できます。

そのため、他社の影響を受けている状態に見えたとしても、実際には、他社ではなく、自社による自社を縛る行為が、背景に隠されていると言えます。

自社を縛るコスト、他者を縛るコスト。

先ほど「周囲を変化させるから当事者が変わるのではなく、当事者が変わるから結果として、周囲が変化する」という話に触れました。

一般的に言われている順序とは、反対であるという指摘です。

そこで、この章では、「周囲の変化ではなく、当事者の変化が先である」という部分について、考察を加えていきたいと思います。

前の章で、「法人が別の法人を育てようとすることは、ほとんどの場合起こり得ない」という話をしました。

そして、個人の場合だと、後進育成や応援・支援などの場合においては、例外的ではあるものの存在する、という話も同時にお伝えしました。

では、個人間と法人間では、どのような違いがあるのでしょうか。

それは、コストの担い手です。

「法人が別の法人を育てようとすることは、ほとんどの場合起こり得ない」のは、別の法人を育てることで得られるメリットとコストの収支が、単純に合わないからです。

そのため、メリットが上回れば、これは成立することもあります。

例えば、非公開株式であるスタートアップ企業の支援や、エンジェル投資家による資金支援などです。

最近では、個人でも資金を投じることのできるプラットフォームがありますし、反対に、個人でも支援を募ることができます。

では、個人間の場合、(これから上がろうとしている)別の個人を育てる際に、本来であれば、得られるメリットとコストの収支が合わないのに、なぜ支援する場合があるのでしょうか。

それは、飛び出しているコストを、支援側である個人が受け持っているからです。

法人間では、コストが飛び出していたら、関わることはありませんが、個人間であれば、少なくとも目先の収支を気にすることなく、支援にかかるコストを受け持つことができるからです。

おわりに。

今回は、「その法人の年商は、その法人と関わる取引先が決める」という視点から、その理由と背景について考察してきました。

ここまで見てくると、さまざまな背景や理由が、折り重なって、蓄積していることがわかります。

そして、長い目で見た投資(収支が合うもの)においては、やはり個人や個人がもつ法人格が圧倒的に有利です。

ですが、法人で、このレベルの投資と育成をすることができれば、社内における社員育成にも応用でき、その企業自身のレベルがさらに高まっていくことは、言うまでもありません。