はじめに
今回のテーマは、「時は金なり」の本当の意味を探る。です。
最近では、そこまで露骨に語られることはなくなりましたが、それでも、時間とお金を対比させたキャッチフレーズは、世の中にあふれています。
ですが、同時に、「時は金なり」って、どういう意味合いなのだろうかと考えてしまいます。
理由は、世間一般で言われている意味との比較はもちろん、事業を営んでいる方の「時は金なり」の意味合いは、一般的な意味合いとは異なると考えているからです。
なぜ、そのような違いが出てくるのでしょうか。
今回は、その辺りの考察から、記事を進めていこうと思います。
商品・サービスの値段を引き上げる「本当の意味」。
以前、顧客企業の商品やサービスの値段を引き上げる、というお話をしましたが、この最大のメリットは、事業収益の改善です。
自社の取り扱っている商品やサービスの値段が上がることで、今までと同じ営業努力やコストで、利益のみが伸びる現象を引き起こすことができる、というお話でした。
ですが、それ以上に目に見えないメリットは、「時間」です。
今お伝えした、今までと同じ営業努力やコストで、利益のみが伸びるということは、反対に言えば、同じ利益を確保するという観点から見ると、
かかるコストが減少するということになるからです。
具体的に言えば、人員のリソースや再配置もさることながら、同じ人員の使っている時間もカットできて、浮いた時間が生じるため、別のことをしてもらえる余白が生まれます。
「時間」は目に見えないだけに、いかに見える化や言語化していても、やはり、その価値は表面化しにくいところでもあります。
売上や利益は数字で表ができる指標なだけに、目で見て実感しやすいですが、「時間」を稼ぐことができている実感は、メモしたり、紙に起こしたとしても、それで何ができるかは、自社で考える必要があるからです。
ですが、余白が生まれることは、自社の既存事業の発展はもちろんのこと、新しいことにチャレンジできる余地を生み出すことにもつながります。
現在の事業は、軌道に乗っていて安定しているのであれば、なおさら、自社の地盤や基礎をより強固なものとし、流れる時代の変化に乗り続けるための、基礎的な地盤づくりや研究開発は、必要不可欠です。
このように見えていくと、儲かっている企業が益々繁栄を成していく一方で、現在厳しい企業が益々ジリ貧になっていく理由が見て取れます。
一発逆転は、日々の事業の中に。
これをお読みになっている経営者の方で、「一発逆転」思考を持っている方は、あまりいらっしゃらないと思います。
理由は、「借金背負って大一番」みたいな発想の経営者は、すでに息絶えていて、事業の継続もしていないはずだからです。
昨年や今年のような状況において、強気の姿勢で勝負できた企業の多くは、今までの事業を地道に歩んできて、新規の事業や新たな取組みに、時間を割くことができた企業がほとんどです。
言い換えれば、感染症が降りかかろうと、天変地異が起ころうと、もともと生き残ることができる地盤を育て続けている事業者や経営者なのです。
もちろん、新しいことをする上で、「失敗したらと思うと、二の足を踏む」ということがあるかもしれませんが、
むしろ、最悪の事態を想定した上で、それを織り込みながら、既存事業と新しい取り組みをバランスさせている経営者のほうが多いと思います。
そのため、取り組みやフットワークは迅速にしながらも、取り組みそのものや姿勢は、かなり地味で地道な作業とも言えます。
事業という乗り物は、急発進もできなければ、急ブレーキもできず、急な方向転換もできません。
この観点からも、やはり、一度顧客から信頼を得た経営者が、その後も反映し続ける理由もわかりますし、反対に、一発屋で消えていった花火のような「はかない」事業の説明もつけることができます。
キャッシュリッチは、時間持ちでもあり、余白持ちでもある。
これは事業というより、国際的な枠組みの話になってしまいますが、国際連合安全保障理事会(国連安保理)の常任理事国と呼ばれる大国五カ国は、「拒否権」を持っています。
国際的な組織における議決の中で、これら五カ国は、自国の意思でのみ、その賛否を決めることができます。
実際には、政治的な駆け引きや外交問題も深く絡む問題なので、一概にそうとは言えないかもしれませんが、これは、事業を営んでいる経営者も同じなのではないでしょうか。
お金があれば、時間にゆとりを持ち、余白が生まれる。
そうすると、事業における「拒否権」の発動が可能になるということです。
そして、それは相手の事業者と「馬が合わない」とか「何となく気に入らない」といった理由であっても、拒否の体裁だけ整えておけば、その事業者とは一生関わらずに済ませることができるのです。
こうすることで、余計な時間浪費を防ぐことにもつながり、やはり先ほどお伝えしたような好循環につながると言えます。
その点で、自社よりもさらに上位の企業群とつながりを持とうとする時は、より一層の気遣いが必要になってくるとも言えます。
そうでなければ、自社が「拒否権」の発動と同時に、相手企業も「拒否権」の発動ができるからです。
自社の独立運営をより強固なものにするためにも、「拒否権」を持つ地盤の強い経営を図るためにも、時間を得るという観点から、「時は金なり」を活かす経営に結びつける必要があると言えます。
おわりに
今回は、「時は金なり」の本当の意味を探る。というテーマでお届けして参りました。
自社のサービスや商品の価格を引き上げるということは、相手企業の経営にも関わることなので、事業によっては、一朝一夕に行かないところもあります。
ですが、自社の事業に向き合う姿勢を見せることもまた、パートナー企業の役目であるとも言えます。
それこそ、お互いがお互いに、いつでも「拒否権」を発動させることができるくらいの強さ同士でなければ、どのみち長い関係性をつないで行くことは困難だからです。
自社が相手の下請け企業の一社で終わるか、価格が上がっても関わっていきたいパートナー企業としての地位を確立するか。
今後も、たゆまぬ務めを果たすためにも、自社の価値やユニークさを言語化し、見直していきたいところです。