はじめに

先日、あるところで施術を受けている時に、一本の営業電話がかかってきました。

ふと気になったのですが、そもそも営業電話とは、一体何なのでしょうか。

地域密着型の中学生向けまで塾などであれば、まだテレアポなどの意味もあるのかもしれませんが、広告などで成果報告と称して、電話をしてくる意味がわかりません。

これは、「直接会ったほうが話が早い」という姿勢も同じです。

これをお読みいただいている方であれば、どのような点に「引っかかり」や「違和感」を覚え、どのような点に思いを巡らせていくのでしょうか。

今日はこのあたりから、お話を進めていきたいと思います。

かけてくる人の思惑が透けて見える営業電話

言葉には、基本的に二重以上の意味合いが含まれることが多く見受けられます。

小さい頃、「友だちの親御さん」が、夕飯の支度をし始めたら、帰りなさい。とか。

食事の席で、ぶぶ漬けを出されたら、それは「もう帰る時間ですよ」という意味合いであるとか。

そういった類の話です。

この場合は、言語の代わりに、行動でもって、その意味合いをにじませていますが、

言葉でもって、別の言葉の意味合いをもたせている場合がある、というのが、先ほどお伝えした「言葉には、少なくとも二重の意味がある」という言葉の意味です。

「帰ってください」と言われたら、それは文字通り「帰れ」という意味にもなりますが、

先程の営業電話の例で言えば、「ちょっと忙しいので」という返答は、「うっとうしいので、早く切れ」という意味になる、ということです。

営業電話であれば、かけてくる人も電話を取る人も、言外の意味がわからなくても、困ることはほとんどありません。

しかしながら、これが取引先となると、また話が変わってきます。

手動で予定を管理している病院や整骨院などではなく、広告会社などのシステムを用いて、予約管理をしている会社であれば、自社のサイトから、そのサロンやお店の、予約状況を見ることができます。

取引先から見れば、自社のシステムを使ってくれている顧客の予約状況などは、ひと目確認すれば分かるのです。

そのため、「電話をかけて良い時間かどうか」は、電話をかけてから「いまお時間ちょっとよろしいでしょうか」などと聞かなくても、事前に把握できます。

そして、おそらく、事業が順調に進んでいる企業ほど、そうした報告を電話ではしません。

むしろ、様々なデータを用いながら、簡潔にまとめて、メールに添付して送ってくれると思います。

お互いに、そんなに暇ではないからです。

この企業の場合、「電話をかける」ということが、「顧客に対して、成果を出していますよ」というアピールのつもりなのかもしれません。

ですが、それは「電話をかける側の都合」でしかなく、実際には顧客からの評判を、自ら落としにかかっている行為であると言えます。

「営業電話をかけなければならない」という枠組みを壊す

顧客の側から見ると、営業電話や電話による報告が、いかに「余計な手間」をかけさせるか、ということが見えました。

ただ、これは同時に、その電話が「営業電話をかけなければならない」という文脈の中で、かけられているとしたらどうでしょうか。

なぜこのように見えるかというと、自分で事業を営んでいて、すべての決定権が自らにあれば、おそらくこんなことはならないからです。

よって、「上から言われて、仕方なくやっている」みたいなスタンスだからこそ、このような事態が発生すると言えます。

そのため、当該企業の代表や取締役に、お客様の声として先ほどの「余計な手間」の不可解さを報告として届けたら、おそらく、先方からお詫びされて、同じようなことはなくなると言えます。

見方を変えれば、「誰も望んでいない」のに、「誰も望んでいない」方向に事が進んでしまっている場合、実は「つまらない論理」が働いているだけで、それを取り除けば、一瞬で解決してしまう場合もあるのです。

また、そもそもの話になりますが、「営業電話をかけなければならない」ということは、顧客のほうから、自社を探しに来てくれない状況であると、示してしまっているとも見えます。

冒頭の例ではないですが、営業電話という行為が、自社の立ち位置を暗示してしまっているのです。

そうでなければ、顧客のほうから自社のサービスや商品を探し出して、顧客の側からアプローチしてもらえるはずだからです。

では、どのようにしていくと、「顧客に自ら探しに来てもらえる」のでしょうか。

最後にこの点について、見ていきたいと思います。

顧客から進んで自社を探し出し、選ばれるための方法。

ここまで、営業電話という行為が、かえって自社の立ち位置を暗示してしまっている、という話をしてきました。

では、どのようにすれば、自社は選ばれるのでしょうか。

このような事象を考えるときに気をつけたいのは、自社が選ばれるための方策を考えるときに、自社のことについて考えることです。

これは、人間を例に考えると、比較的わかりやすくなると思いますが、

「自社が選ばれるための方策を考えるときに、自社のことについて考えること」は、自分の顔を鏡なしに見ようとしているようなものです。

人間は、鏡や水面など、反射する素材や環境があれば、自分の顔を見ることができますが、そうでなければ、自分の顔を自分で見ることはできません。

これは、自分の顔という実態だけではなく、「自社の方策」という概念においても、同じことが言えます。

つまり、自社が選ばれるための方法を考えるために、自社をいくら見たところで、自社が選ばれる方法は出てこないのです。

そして、競合の分析や差別化を図るといった手法もあるようですが、これは、自社を取り巻く様々な環境の、1つの側面を見ているに過ぎません。

そのため、それだけやって、何かをやった気になっても、「自社が選ばれる」という状況は、永遠に訪れないのです。

おわりに

今回は、「営業電話という謎」というテーマで、お届けしてきました。

正直なところ、営業電話という慣習は、おばけの七不思議と同様に、営業の七不思議といっても過言ではないのでしょうか。

もちろん、電話をかけることが、すべてNGというわけではないので、適宜、使い分けていけばよいのですが、

これだけ様々な連絡手段が普及しているわけですので、ちょっと考えてほしいところであると言えます。

おそらく、3秒考えるだけでも、だいぶ状況は変わるように見えます。