はじめに
今回のテーマは、「世界を編むセールスマン」です。
よく事業を営んでいく上で、「御社を選ぶ理由」を問われることがあると思いますが、その業種・職種を、御社だけしかやっていないということはないと思います。
どんな業種の事業であっても、誰かしら同じようなことをやっている人がいて、唯一無二の存在というのは、言葉では表現されていても、実際には存在しません。
では、どのような点で他社ではなく、自社が選ばれるのでしょうか。
今日はこの点から、考察を始めたいと思います。
他社と同じに見えて、自社しか選ばれない事業
基本的には、唯一無二の事業は存在しないという事実がありますが、では、どこのあたりで、自社と他社は違うのでしょうか。
よく言われるキャッチコピーとかセールスライティングというものがあるのですが、実は、わかりやすい言葉で表現すればするほど、AとBは同じ括りにされがちです。
例えば、当社は〇〇業です。という表現があるとします。
すると、御社は〇〇業の会社という認識をされますが、それならば他社でも構いません。
御社を選ぶ必要性はなくなってしまうのです。
ですが、一言では表現できないとするとどうでしょうか。
今度は、一体何をやっている会社なのか、わからなくなってしまいますよね。
ここに、言葉による表現の難しさがあると言えます。
だからこそ、ウェブで記事を書く際に、ライターを入れたり、コピーライターに宣伝広告の文章を書いてもらったりすると言えます。
ただ、前提としては、自社も他社も与えられている条件に、多少の優劣はあるにしても、基本要件は同じです。
となると、どこが異なるのか。
それは、「編集」をする能力です。
この世界に同じ情報しか存在しないと仮定すると、自然とそうなります。
世の中で同じ情報が流れているのに、とらえ方や視点の違いによって、その情報の編み方が、各社で異なるのです。
だからこそ、同じ業種であっても、A社は選ばれて、B社は選ばれないという現象が生じると言えます。
ちなみに、誰も知らない秘密の情報というのも、基本的にはありえません。
外交機密でもない限り、この世界に、マル秘情報は隠しようもないからです。
これは何も、インターネットが普及した現代に限った話ではありません。
インターネット普及以前から、閉ざされた情報に見えるものでも、実は別の場所で同じようにして、マル秘扱いにされているという場合も往々にしてありました。
言い換えれば、同時多発的に、各地域で同じような情報がマル秘扱いになっていただけ、という話です。
では、公開情報と編集能力だけで、ほかとどのようにして差をつけることができるのでしょうか。
次にこの点について、考えを進めていきたいと思います。
忘れ去られた公開情報と他社との差別化
ファッションや流行の業界など、時代の先をゆく、あるいは、時代を創るような企業もあれば、基本的には時代の変化とともに、事業そのものはそれほど変わらない企業もあります。
そして、そのどちらの企業であっても、基本的には「移り変わり」感や「時代とともに変わらない」感を演出しています。
どういうことかと言うと、基本的に、流行は10年周期で戻ってきます。
いま2022年ですが、現在の流行は、2010年代にはすでにあったものです。
そして、2022年の参考になっている2010年代の流行は、すでに2000年代に存在していたものなのです。
なぜならば、流行り廃りの中で消えたように思われていることや、情報の編集加工の中で、当時は捨てられたものを拾い直して、今の流行として打ち出しているからです。
つまり、当時の取捨選択の中で、捨てていたものや大きく取り上げなかったものを、今の時代では大きく取り上げて、あたかも「時代の先を作っているかのように」見せていると言えます。
こうした背景に眠っているのは、流行というものが、あくまでも人間の言葉や思想の中でしか生み出されないものだからです。
言い換えれば、どんなに細分化したとしても、色はこれ以上開発されないし、人間は、太古の昔からそれほど進化しているわけではありません。
ベースとなる事象に変化の限界値がある以上、流行の演出パターンにも限界があり、それは会社の独自性の打ち出しにも同じことが言えるのです。
そして、それらを知った上で、その範疇でどのような所作ができるか「編集作業」が、その企業の限界を決めていると言えます。
では、最後に御社の価値を決める「価値の決まり方」について、考察を進めていき、今回のテーマを終えようと思います。
御社の「価値」の決まり方
ここで書こうとしているのは、市場原理としての「価値」ではありません。
「人気が高まると、値段が上がっていく」という流れは、あくまでも「価値」の決まり方の1つでしかありません。
では、「価値」というのは、そもそもどういった性質のものなのでしょうか。
それは、「これは価値があります」という認識です。
どういうことかと言うと、「価値」があるかどうか、というのは、あくまでも後付けの基準であって、人間が生まれながらにして身につけている基準ではありません。
この点は、人間が美を感じる感覚とは異なります。
つまり、御社の商品やサービスに「価値」があるかどうか、というのは、先天的な要素で決まるわけではなく、あくまでも、価値があるとわかる認識が必要であると言えます。
よって、「どれだけの価値があるか」ということを認識してもらうことによって、初めて御社の商品やサービスは価値があると認められると言えます。
おわりに
今回のテーマは、「世界を編むセールスマン」というテーマでお届けしてきました。
わかりやすくするほど選ばれなくなり、違うように見せれば見せるほど、同じように見えてしまいます。
人間や世界の全体が決まってしまっているからこそ、その事実を抑えた上で、どれだけ編集を加えることができるのかが重要になってくると言えます。
現代の流行が、10年前に作られたものだとしても、10年前と同じ編集であることはありえません。
明らかに10年前とは違うからこそ、「現代の流行」として取り上げられるので、その点で言えば、今まで脈々と続いてきた先行研究や歴史を踏まえた上で、どれだけ独自の解釈という「編集」を加えることができるかが、焦点となっていると言えます。