あなたの企業にはビジョンがありますか?ビジョンとはその企業の将来の理想像や成し遂げたいことを言語化したものです。大企業のサイトやパンフレットを見ると、必ずといって良いほどビジョンが書かれています。

ビジョンはただの言葉なので、設定してもしていなくても良いのではないかと思うかもしれません。しかし、ビジョンを持っていれば業績がアップしたり、社内の意識を統一することができたりと会社に良い影響をもたらします。だからこそ、規模が大きい企業だけでなく、中小企業やまだ事業を始めたばかりの企業もビジョンを持っておくべきです。

ビジョンは一度作ってから何年も受け継がれるものなので、作るときは慎重にならなくてはいけません。もし、会社の思いを上手く反映できていなかったり、社員に共感されたりするものでなければ効果は薄れてしまうでしょう。

そこで今回は、中小企業がビジョンを明確にしなければいけない理由や、良いビジョンを作るポイントなどをご紹介していきます。社員一丸となって事業に取り組みたい、企業の経営指針がほしいという方はぜひ参考にしてくださいね。

中小企業の指針となるビジョンとは 

ビジョンという言葉を聞いたことがあっても具体的に説明できないという方も多いと思います。

ビジョンとは企業の将来の理想像や達成したい未来を言葉で表したものです。1年先、5年先といったすぐに訪れる未来ではなく、数十年後、100年後とかなり先のことを見据えた上で作ります。

時代の変化によって内容を変えることもあるかもしれませんが、基本的には何年も使用するもので、長い間会社の経営の指針となります。

中小企業がビジョンを明確にすべき理由6つ

「ビジョンを作るのは大変そう」

「設定してもあまり意味がないんじゃないか」

そう思われる方もいるかもしれません。しかし、ビジョンはただの言葉に見えて、会社に色々なメリットをもたらしてくれるので、企業の規模に関わらず持っておくのが理想的です。

そこで、中小企業がビジョンを明確にすべき理由をまとめていきたいと思います。

  • 社員の団結を促進できる

ビジョンとは達成したい未来を表現したものです。つまり、会社が目指すゴールとも言えます。ビジョンがあればそれに向かって社員が仕事をするようになるため、社内の意識が統一されます。

  • 会社の業績が上がる

社員がビジョンによって一丸となると、会社全体が目標達成に向けて動き出すので成長が速くなります。

成長が速くなれば業績アップなどの結果にも繋がります。ビジョンがなくても成長することはできますが、社員がゴールを共有していた方が効率的に、早く結果を出すことができるでしょう。

  • 採用で有利になる

ビジョンは社内の意識を変えるだけでなく、社外へのアピールにも使うことができます。例えば採用では会社のビジョンが非常に役に立ちます。

就活生や転職をしている人にとって企業選びの決め手はいくつもあります。例えば給料、勤務地、待遇などが思いつくのではないでしょうか。こうしたものと同じくらい大切なのが、企業のビジョンです。ビジョンがあるとどんな会社なのか、どんなことに価値を置いている企業なのかがが分かるので、仕事を探している人の印象に残りやすいです。

また、企業の目標は入社後に自分が掲げる目標になるもの。だからこそ、ビジョンに賛同できる人だけが応募するので、会社に合った人材が集まり、離職率を下げることにも繋がるでしょう。

このようにビジョンは採用の場面でもメリットがあります。

  • 長期的な視点で経営判断ができる

ビジョンは数十年後の遠い未来を見据えて作られるものなので、ビジョンがあれば長期的な視点で経営判断ができるようになります。

長期的な目標がないと、少し状況が変わっただけで判断の軸がブレてしまい、1つの決断が企業の存続に関わる事態に繋がる可能性もあります。

一方で、ビジョンがあれば、少々の変化があっても達成したい目標を見据えた一貫性のある判断ができるようになります。

  • 想定外の出来事にも冷静に対応できる

世界的な不況や災害など、予測できない出来事は企業に大きな影響を与えます。最近では新型コロナウイルスの流行に多くの企業が頭を悩ませたでしょう。

売上が下がったり、閉店の危機に瀕したりすれば対策が必要になりますが、ビジョンがあると、こんなときでも冷静に本当に必要な判断を下せるようになります。

  • 創業者が引退しても思いが引き継がれる

企業を成長させた創業者もいつかは引退して次の人にバトンタッチするときが来ます。経営者が変わると経営状況も変わってしまい、売上が下がるというパターンは珍しくありません。

創業者が引退しても事業を存続させるためにはビジョンを設定しておきましょう。会社が目指す将来像を言葉にして、それを受け継いでいけば、創業者の思いが引き継がれ、経営者が交代しても成長し続けることができます。

企業に良い影響を与えるビジョンの特徴4つ 

ビジョンはただ設定すればいいものではありません。何年も大切に受け継がれ、多くの人に共有される良いビジョンを作らなければ最初に紹介したようなメリットを得ることはできません。

そこで次に、企業にメリットをもたらす良いビジョンの特徴を4つ挙げていきます。ビジョンを作るときにはこの4つを押さえたものになるように意識しましょう。

  • 心から達成したいと思っている

ビジョンは会社が事業を通して成し遂げたい未来を反映したものです。だからこそ、会社にとって本当に達成したいことを表現できていなくては意味がありません。

なんとなく綺麗事を並べたり、他社の真似をしたりして作ったビジョンでは思い入れがなく、定着させようともしないので、効果は現れません。

そこで、本気で達成したいと思っている理想をビジョンに込めるようにしましょう。

  • 社内外の人を惹きつける

生きたビジョンにするために欠かせないのが、共感を得ることです。

ビジョンを会社の成長に繋げるためには、まず社員に共感してもらうことが欠かせません。さらに、顧客に共感してもらうことは契約や長期的な関係を築くことに繋がります。

そこで、ビジョンを作る人たちだけでなく、社内外の人にも共感されるような言葉を作ることを意識しましょう。

  • 抽象的すぎず実現の可能性がある

ビジョンを作るときに気をつけなければいけないのが、抽象的になりすぎないことです。「全人類を幸せにしたい」、「暮らしやすい世界を」といったような抽象的すぎる言葉だと、具体的にどんな未来を思い描いているのかイメージできないので、共感されにくいです。

そこで、具体的に想像しやすく、且つ実現できる可能性もあるようなビジョンを作りましょう。

  • 社会との接点がある

将来成し遂げたい目標として「○年までに売上1億円」、「全国に500店展開」といったものを思い浮かべる方もいるでしょう。確かに、企業が存続していくためには売上を上げたり、規模を大きくしたりすることも大切です。

しかし、ビジョンは社外にもアピールするものなので、社内だけの目標ではなく、社会との関わりがある内容にすることがポイントになります。

中小企業のビジョンの作るときのポイント9つ

良いビジョンを作るためには押さえるべきポイントがいくつかあります。これから紹介していくので、社内でビジョンを作成するときにぜひ取り入れてくださいね。

  • 経営陣全員でビジョンづくりを進める

ビジョンの作成にはできるだけ経営に関わる人が全員参加するようにしましょう。ビジョンは会社の長期的な目標を示したものなので、経営陣の誰かが賛同できないものが完成してしまうと、その人のモチベーションを下げ、さらには会社に影響が出てしまう恐れがあります。

そこで、経営陣はできるだけ全員がビジョン作りに関わるようにし、まずは会社のトップにいる人達が納得できるものを完成させましょう。

  • ビジョンを作る目的を共有する

チームが集まった最初の会議ではビジョンを作る目的を共有しましょう。ビジョンという言葉はなんとなく知っていても、どんなものか具体的に理解している人は意外と少ないです。

そこで、ビジョンとはどういったものか、なぜそれを設定するのかといったことを最初に説明し、意識を統一しておきましょう。

  • 事業内容を明確にする

良いビジョンを作るためには自社への理解を深めることが欠かせません。どんな事業を行なっているのか、その事業を行う理由は何か、これから社会とどう関わっていくのかといったことを明確にしましょう。

そうすれば、現実に即していて具体性のあるビジョンを作ることができます。

  • 企業の歴史を振り返る

会社のこれまでの歴史もビジョンを作る上で参考になります。例えば創業者の思いや、これまでどのように社会に貢献してきたのかを見返すことで、会社がこれからどのように進んでいくべきかが見えてくるでしょう。

会社の歴史に関する資料を見たり、創業者や創業当時から会社に勤める社員にインタビューをしたりして、情報を収集しましょう。

  • 社外の状況を調査する

社内だけでなく、社外の状況を調査することも欠かせません。ビジョンは何十年先の未来を見据えたものなので、これから日本や世界がどのような状況になり、それによって人々の生活はどう変化するかを予測した上で作ることが求められます。

  • アイデアは積極的に出す

ビジョンに欠かせない「会社の思いを上手く表現した言葉」を導き出すためには、多くのアイデアを場に出して、その中から最適なものを選び出すというプロセスが必要になります。

そこで大切なのが、参加者がどんどん意見を出すことです。場に出るアイデアが多ければ多いほど、良い言葉を見つけられる確率が高くなります。

そのためにはメンバーが遠慮なく意見を出し会える環境を作ることも大切です。

  • 他人の意見を否定しない

チームでプロジェクトに取り組むときに気をつけたいのが、他人の意見を否定しないことです。自分とは違う意見の人がいるとつい否定したくなることもあるでしょう。しかし、ビジョンづくりでは、まずはメンバーがそれぞれ意見を出し合い、多くのアイデアに触れることが大切です。もし、意見を否定してしまえば、指摘された人は二度とアイデアを出せなくなってしまうかもしれません。

そこで、他人の考えを否定しないことをプロジェクトの決まりにしましょう。

  • 完成したら時間を置いて改めて確認する

ビジョンが完成したら、いきなりリリースするのではなく、時間を置いて本当に適切なビジョンになっているか再度確認するようにしましょう。前回は「これが良い!」と思えたものでも、後から冷静になって見返してみると物足りなかったり、本来の意図とはズレたりしている可能性があります。

最低でも1日は置くことで、客観的な目で見れるようになるでしょう。

中小企業のビジョンが完成した後にすべきこと3つ 

ビジョンは完成したらそれで終わりではありません。多くの人に共感されて、影響を与えるようになってこそビジョンを作った意味が出てきます。

最後にビジョンが完成した後にすべきことをまとめていきましょう。

  • 社内で発表する

まずは社員に新しいビジョンを発表しましょう。ただし、社内誌で発表したり、朝礼で知らせたりするだけでは不十分です。

ビジョンは何十年も掲げるもので、社員がいつも頭の中に入れておくべきものだからこそ、印象に残るタイミングで発表する必要があります。例えば新年度の初日や、会社の設立記念日などは発表するタイミングとしてはぴったりです。

また、ただアナウンスするだけでなく、なぜこのビジョンにしたかを伝えたり、常にそのビジョンを念頭に置いて日々の仕事に取りかかって欲しいことを伝えたりすればより印象に残るでしょう。

  • 社外に発表する

社外へはパンフレットに記載したり、公式サイトでビジョンを作ったことをお知らせしたりすることでリリースしましょう。

ビジョンに共感してもらえれば、より顧客との関係を深めることができます。

  • 定着しているか確認する

社内外へのリリースが済んでも、全ての社員がビジョンを覚えて、意識して行動しているわけではありません。そこで、リリース後は定期的に新しいビジョンが定着しているかどうかをチェックする必要があります。

例えば社内のプロジェクトの目標が会社のビジョンに合っているか、社員一人一人の行動がビジョンに沿っているかといったことを確認すればどのくらい定着しているかが見えてくるはずです。

定着が不十分な場合は、対策を考えて、より浸透するように改善していきましょう。

まとめ 

ビジョンとは会社が事業を通して成し遂げたいと考えている未来を言語化したもので、何十年後、場合によっては100年以上先のことを見据えて作り、会社で長い間引き継がれていきます。

会社の経営の指針となり、また、社員に浸透すれば業績アップにも繋がるものだからこそ、重要度は非常に高いです。

ビジョンを作るときには会社の理想の姿を上手く言語化し、社内外の人に共感されるようなものを目指しましょう。