業界に属している他社ではなく、御社が選ばれるためには、どのようにしていくのか。
これは、日々業務を行いながらも、常に思考されていることと思います。
しかしながら、ひとりの消費者として、商品を選ぶ時に、商品の特徴で選んでいることは少ないことに気がつきます。
例えば、このバックは、口が広くて、他のバックより開けやすいから買う、といった理由づけです。
令和という時代において、開けにくいバックなんて、そもそも置いていないですよね。 どれもそれなりに開けやすくて、そこでは差がついていません。
ひとつの考え方として、「ブランド」という考え方があります。
有名メーカーの商品だから買う。といった買い方です。
ところが、ブランドは長い年月と多くの資金をかけて生み出されています。
そのため、真似をしたからといって、御社のブランド商品が、すぐにできるわけではありません。
では、どのようにして、御社が選ばれるために、差異を作り出していけば良いのでしょうか。
この点について、今回の記事では見ていきます。
なぜ違いを出そうとするほど、同じようなものになってしまうのか
例えば、パソコンですが、全く同じものがあると思えるくらい、わずかな差異を競っては、 販売できるように取り組んでいるのが現状です。
パソコンを作っている人や、中身に詳しい人以外は、どれも同じように見えてしまいます。
生み出している違いは、素人からすれば、若干の違いに過ぎず、ほとんど同じようなものです。
そのため、スペックの違いとか、〇〇モデル、といった、他と似たような「差別化めいたもの」に終始してしまうのです。
「〇〇モデル」に至っては、意味づけの変更に過ぎないため、製品そのものは何も変えなくて も、新製品として送り出すことができてしまいます。
記号を消費する世界
こう考えてくると、先ほどの例で出した、〇〇モデルのような、意味づけの変更によって、 ほんの少し違う記号を生み出していると言えます。
では、こうした記号を消費する社会は、なぜ成立するのでしょうか。
本来であれば、それが記号に過ぎないと気がついているとしたら、買わなくなってもおかしくないはずです。
大した違いなど、そもそも存在しないわけです。
しかしながら、実際には、世界は今も、こうした記号を消費する社会を続けています。
しかも、記号を消費していると騙されて生活をしているわけではなく、前出たものとそんな に変わらないと知りながらも、積極的に買っている場合が多く存在しています。
実際に、野菜や果物などは、国産と書かれているものしか買わない人や、特定の国や地域の ものは買わない(あるいは買う)という人もいます。
日頃から、積極的に、記号を消費する社会に、参画しているのです。
そもそもオリジナルのない世界
ここまで、記号を消費する社会という話を書いてきましたが、記号の元となっているオリジ ナルも、そもそも存在しません。
例えば、今、読んで頂いているこの文章は、自分で書いたものですが、この文章の元となっ ている日本語は、ずっと昔に作られたものです。
日本語のオリジナルを生み出した人は、とっくの昔に亡くなっています。
ということは、日本語という言語に限らず、他の言語でも同じため、オリジナルを生み出し ている人はいないことになります。
そのため、オリジナルという事実は、言葉にした時点で、すでにコピーになってしまうと言えます。
オリジナルのほうが、立ち位置が上と考えていたものが、コピーのほうが上になってしまう現象です。
図式で表すとすれば、「オリジナル>コピー」ではなく、「コピー>オリジナル>コピー」とい うことになります。
すでに、コピーがオリジナルを超えた存在になってしまっています。
ビジネスでの記号社会を乗り越える
ここまで触れてきたオリジナルやコピーに限らず、記号を消費している社会であることがわかりました。
なので、記号を生み出している、という意識で、積極的に記号を生み出し、ビジネスを行っていけば良いことと言えます。
けれども、そこまでわかったとして、簡単に生み出すことができるような記号であれば、簡単に真似されてしまいます。
有名な商品に限らず、社会ではパクリ商品ばっかりですよね。
記事に関しても、どこからのページからコピペ(※)して、引用するわけでもなく、あたかも自らの意見かのように、載せている人もいます。
(※「コピペ」というのは、コピーアンドペーストの略で、パソコン上などで、文章や画像な どのデータをコピーして、自分のページやレポートなどに貼り付けることです。)
このページは、もちろんコピぺではありませんが、このページさえも、オリジナルではないわけです。
理由は先ほどもお伝えした通り、この文章を作成するために用いている日本語そのものが、 オリジナルではないからです。
言い換えれば、誰かが作ってくれた日本語をコピーして、この文章を作成しているのです。
ただ、おそらくなのですが、この記事をコピペしたところで、文字を埋めるだけの記事ならば良いかもしれませんが、ブログや何かのページに寄せる文章としては、この記事だけが浮いてしまうでしょう。
その人が書いている他の記事と、明らかに、性質が違うからです。
そして、見る人が見ると、抽象度も異なっています。
その人がどんな記事を書いているかはわかりませんが、コピペした記事が、他の記事と比較 して、おかしいかどうかの判断ができません。
コピペした書き手が、コピペしかできない程度なんだなと、依頼主に見破られて、取引してもらえなくなるだけです。
明確な違いを打ち出して、自らの「オリジナル」を捏造する
では、どのようにして、違いを打ち出していけば良いのでしょうか。
答えはシンプルです。 それは、抽象度を高めて、他の真似できない違いを打ち出していくことです。
たぶん、ピンときた人と来なかった人がいると思います。
もちろん、優劣など全くありません。
ピンとくれば、自らの事業に活かせば良いだけですし、ピンと来なかった人も、ピンと来なかったなりに、自らの事業に生かしてみれば良いことになります。
どちらの立場でも、いくらでも活かす方法はあると言えます。
そして、一朝一夕にはできないからこそ、御社独自の違いが生み出され、選ばれる理由につながってきます。
反対に、簡単にできるものなのであれば、コピペされるだけですし、コピペされた他の商品と比較されて、埋もれるだけです。
けれども、ひとつ注意点を申し上げると、抽象度を上げて、他の真似できない違いを打ち出 していくのは、簡単ではありません。
御社の事業に対する自己否定のまなざしが必要で、思考と向き合う際にも、かなりの痛みを伴います。
御社を否定し、御社を含めた業界をも否定するわけですから、御社はもちろん、御社の属してきた業界の歴史そのものを、否定するような思考に向き合うことになります。
そのため、こういった観点からも、他では真似のできない御社独自の差異になると言えます。
まとめ
さて、これまで、「業界に属している他社ではなく、御社が選ばれるためには、どのようにしていくか。」ということについて考えて参りました。
その中で、現代の社会が、具体的な性能の違いで選んでいるのではなく、ブランドなどの記号をもとに消費している社会であることについて、書いてきました。
それから、ブランドなどの記号以上に、この文章を書いている日本語そのものが、すでにオリジナルではないことを記しました。
けれども、本文で記している「コピー」と「コピペ」は違うことにも触れ、「コピペ」されて埋もれるような、簡単な方法に行かないほうが、より成果に近づくことも、お話し致しました。
では、どのような方向を目指すのかということですが、これは、「他社の真似できない抽象度の高い違いを打ち出す」ということを、お伝えしました。
そこには、御社自身の否定や、御社の属している業界全体の否定という、痛みと向き合い、 思考に取り組んでいく中で、抽象度の高い他社の真似できない違いを、生み出すことができると言えます。