この記事では次の内容をまとめています。
・アップセルとクロスセルの違い
・アップセル・クロスセルの事例
・アップセル・クロスセルの提案方法
売上を伸ばすためにアップセル・クロスセルの実施を考えている方が知っておくべきことを全てまとめました。
アップセルとは?
顧客が購入している・もしくは購入を検討している商品の上位版の商品を勧め、購入を促すことです。
例えば、iPhoneの場合、上位の商品の例としてiPhone ProやiPhone Pro Maxが挙げられます。
アップセルは客単価を上げることを目的として行われます。
より上位のものを購入すれば、顧客にとっても満足度が上がるというメリットがあります。
クロスセルとは?
顧客が購入しようとしている商品と関連した別の商品を勧めることです。
例えば、iPhoneを購入しようとしている顧客に画面の保護フィルムやスマホケースの購入を促すのがクロスセルです。
アップセルと同様、クロスセルも客単価を上げることを目的としています。
Amazonの商品ページで関連商品や、よく一緒に購入されている商品が表示されるのもクロスセルにあたります。
アップセルとクロスセルの違い
提案する商品
アップセルとクロスセルの違いとして、まず勧める商品が挙げられます。
アップセルの場合、買おうとしている商品、もしくはこれから買おうとしている商品の上位版を勧めます。
一方、クロスセルでは購入しようとしている商品と関連するものを追加で提案します。
勧めるタイミング
アップセルを行うのは購入前や、既に利用しているサービスの更新時など。
一方でクロスセルの場合は購入を検討している段階で行われます。
アップセル・クロスセルのメリット3つ
この章ではマーケティングの一環としてアップセルやクロスセルを行うメリットをご紹介します。
①新規顧客獲得の必要性が下がる
②顧客の満足度が高くなる
③顧客生涯価値(LTV)の向上
新規顧客獲得の必要性が下がる
新規顧客の獲得には広告費や営業コストがかかり、その費用は増加傾向にあります。
アップセルやクロスセルによって客単価が上がれば、新規開拓への依存度が下がります。
その結果、低コストで安定的な経営基盤を築くことができます。
また、既存顧客にアプローチすれば、新規顧客を開拓する手間が省けるため、業務の効率が上がるというメリットもあります。
顧客の満足度が高くなる
顧客がより自分に合った商品やサービスを利用することで、顧客の満足度が上がります。
特にアップセルでは高性能な商品や、機能がより幅広いものを提案するため、顧客の課題を深く解決できるようになります。
また、自分でも気づかなかったニーズが満たされ、思っていたよりも満足感が得られることもあるかもしれません。
使用満足度が高ければ、他社との差別化になります。
顧客生涯価値(LTV)の向上
顧客生涯価値とは顧客が企業との取引を始めてから終わるまでの間にもたらす利益の総額こと。
アップセルやクロスセルにより顧客の満足度が上がれば、企業に対して好印象を持ち、リピーターとなって顧客生涯価値は上がります。
ちなみに、高い満足度を得た顧客は紹介によって新たな顧客を生み出すことも。
顧客との関係を一度きりで終わらせず、長く維持することは企業にとって大きなメリットとなります。
アップセル・クロスセルのデメリット2つ
この章ではアップセルやクロスセルを行うことで生まれるデメリットをご紹介します。
①ニーズに合わない提案は不信感を生む
②販売フローが複雑になる
ニーズに合わない提案は不信感を生む
顧客のニーズに合わないにも関わらず、アップセルやクロスセルを行うと「押し売りされた」と感じ、企業への不信感を生むことがあります。
どんなに性能が高く、良い商品でも、ニーズに合わなければ価値は感じません。
これを理解せずに勧めると好印象は持たれないでしょう。
最悪の場合、購入自体を断られ、他社に顧客をとられるということにもなりかねないため、顧客のニーズは正しく理解しましょう。
販売フローが複雑になる
アップセルとクロスセルを行うとき、通常の「商品を紹介して購入してもらう」というシンプルな流れに追加提案が加わるため、販売フローはより複雑になります。
社員が混乱しないよう、販売プロセスをマニュアル化し、教育や研修を通してやり方を周知しましょう。
先ほど触れたように、ニーズに合わない提案をすると顧客満足度が下がる恐れがあるので、ケースに合わせて柔軟にやり方を変更することも大切です。
アップセルの事例
- ノートパソコンの購入検討者にメモリ容量やCPU性能が上位のモデルを紹介する
- ビジネスツールで利用アカウント数を増やせるプランを紹介する
- 単品購入から定期コースへの切り替えを促す
- まとめ買い
クロスセルの事例
- ハンバーガーを注文した客にポテト・とドリンクのセットを勧める
- スマートフォンを購入した客に画面保護フィルムやケースの提案をする
- 電化製品を購入した客に電池の購入を促す
- 保険のオプション
- ECサイトの関連商品のおすすめ機能
アップセル・クロスセルが成功する提案方法3つ
この章ではアップセルやクロスセルを成功させるためにすべき提案方法をご紹介します。
①得られる価値を伝える
②キャンペーンでお得感を出す
③適切なタイミングで勧める
得られる価値を伝える
アップセルやクロスセルをするということは顧客により多くの費用を支払ってもらうということです。
これに納得してもらうためには、より上位の商品、もしくは関連商品を購入することでどのような価値が得られるのか、顧客にとってのベネフィットを伝えましょう。
例えば、製造業向けの生産管理システムを販売する場合「上位プランにすることで〇〇の作業にかかる時間を30%短縮できます」といったように具体的に提示すると効果的です。
得られる価値が大きいことが分かれば、料金が多少高くなっても購入しようと思えます。
キャンペーンでお得感を出す
アップグレードや追加導入を後押しするには、期間限定の割引や特典を設定するのも有効です。
例えば、クロスセルの場合「2点以上購入で10%引き」などのキャンペーンを行うと、関連商品の購入をスムーズに促せます。
キャンペーンをアピールすれば、上位プランや関連商品の認知度を上げられますし、顧客が「今がチャンス」と感じて、意思決定のスピードも速くなるでしょう。
適切なタイミングで勧める
アップセルやクロスセルはタイミングも大事です。
タイミング次第では提案された商品やサービスに対してあまり興味が湧かず、購入や契約には至りにくいです。
例えば、導入から半年が経ち、サービスの利用頻度が高くなっている企業に対して「より多くの機能を備えており、業務をさらに効率化できる上位プラン」を提案すると、前向きに検討してもらえる確率が高いです。
このように顧客の利用状況や段階を見極めたうえで提案することが求められます。
アップセル・クロスセルですべき戦略6つ
この章ではアップセルやクロスセルを成功させるためにすべき戦略をご紹介します。
①過去の購買履歴に基づいておすすめする
②顧客ロイヤリティの高い客に勧める
③カスタマーサクセスに力を入れる
④アップセル・クロスセルを見込んだ商品設計を行う
⑤スムーズな提案方法を構築する
⑥押し売りはしない
過去の購買履歴に基づいておすすめする
顧客に対して、ニーズに沿ったアップセルとクロスセルを行うには過去の購買履歴に基づいて提案することが大切です。
- これまでに購入した商品・サービス
- 商品・サービスの使用状況
- 過去の問い合わせ履歴
このような情報をもとに、顧客の需要を見極めましょう。
顧客ごとに最適化された提案を行うことで、不要な営業アプローチが減り、営業の効率も成約率も上がります。
顧客ロイヤリティの高い客に勧める
顧客ロイヤリティとは企業やその商品・サービスに対する顧客の信頼・愛着のこと。
顧客ロイヤリティが高いと、企業への信頼や愛着も高いということになります。
アップセルやクロスセルは顧客ロイヤリティが高い顧客に行うことでより成功しやすくなります。
顧客ロイヤリティの高さを測る方法として、NPSがあります。
これは「この商品・サービスを知人にどのくらい勧めたいと思いますか?」という問いに0~10で答えてもらうもの。
数値が多ければ多いほど、ロイヤリティは高いということです。
カスタマーサクセスに力を入れる
カスタマーサクセスとは顧客が商品・サービスを通して成果を出せるように支援することです。
導入後のフォローを徹底し、顧客が製品やサービスを十分に活用し、成功体験を積めば、自然と上位プランや関連製品への関心が高まります。
例えば、マーケティング支援ツールを販売する企業の場合、活用レポートや改善提案を顧客に対して定期的に共有することで、「さらにツールを活用するには上位プランが必要」という流れを作れます。
アップセル・クロスセルを見込んだ商品設計を行う
アップセル・クロスセルを行うには当然、あらかじめ上位プランや関連商品を用意しておくことが欠かせません。
アップセルの場合、数段階のプランを用意しておくのがおすすめです。
利用が進むごとに次の段階のプランを紹介することになり、自然なステップアップを促せるからです。
スムーズな提案方法を構築する
社内でアップセルやクロスセルの提案の成果を最大化するには、各営業担当の勘やタイミングに任せず、再現性のある仕組みを構築することが必要です。
例えば、CRMツールやMAツールを活用し、「利用開始から○ヶ月経過後」「契約更新前」など、タイミングを決めて上位プランを提案するといった自動フローを設定すると、提案の抜け漏れが防げます。
また、提案のトークスクリプトや営業資料を用意しておくと、提案の質を均一化できます。
押し売りはしない
先ほども少し触れましたが、アップセルやクロスセルは人によっては「押し売り」と認識される恐れがあります。
そこで、顧客の課題の解決に役立つ場合や、ニーズに合う場合のみ実施し、長期的に良好な関係が築けるようにしましょう。
アップセルとクロスセルが両方行われることも
アップセルとクロスセルはどちらか1つだけ行うものではなく、場合によっては両方行われることもあります。
例えば製造業の場合、まず基本モデルの機械からより高性能な上位モデルへ切り替える提案(アップセル)を行い、同時に保守契約・専用工具・周辺機器などの追加提案(クロスセル)を実施するケースがあります。
ダウンセルとは?
ダウンセルはアップセルの反対で、顧客に対し、最初に購入を検討していた・もしくは現在利用している商品の下位バージョンを勧めることです。
「予算に合わない」「機能が過剰」といった理由で購入の見送り、または契約解除を検討している顧客の離脱を防ぐために行われます。
より要望に合った商品・サービスを利用できるため、顧客満足度が上がり、顧客と長期的に良好な関係を築くきっかけになります。
まとめ
アップセルは現在使用している製品や、これから購入しようと考えている製品の上位モデルを提案すること。
一方で、クロスセルは関連商品をおすすめすることです。
どちらも客単価を上げる目的で行われます。
ただし、アップセルとクロスセルは「無理な押し売り」と捉えられるリスクもあります。
これを防ぐためにはニーズに合った提案をすることが重要です。
