はじめに。

今回のテーマは、「事業は、おみくじをしっかり読める人に向いている」です。

経営者の方に中には、占いやスピリチュアル、神社仏閣巡りが好きな人も多いです。

以前、歴史が好きな経営者について書きましたが、それと同じくらい、もしかすると、それ以上に好きな方も多いかもしれません。

ですが、こうした経営者の方は、もちろん、事業を運任せにしているわけではありません。

では、なぜ科学的なところが徐々にわかりつつある現代において、いまだに根強く、占いが好きな方が多いのでしょうか。

今回は、そこからお話をスタートしていきたいと思います。

占いが好きな人は、判定結果よりも、そこに何が書いてあるかを見ている。

これは占い好きの経営者に限った話ではないのですが、判定結果の吉や凶を見ているわけではありません。

おみくじで言えば、下に書いてある細かい説明書きのところを良く読んでいます。

待人は〇〇とか、失物は〇〇のような説明書きですね。

そして、ここからが大切なのですが、この説明書きの解釈が、占い好きの経営者は上手なのです。

どういうことか説明しますと、例えば、何か厳しいことが書いてあるとします。

事業が失敗するとか、上手くいっても会社のお金を持ち逃げされる場面に遭遇するとか、そんな文面です。(もちろん、神社のおみくじに、そのような直接的な表現をされていることはないと思いますが)

普通であれば、書いてある事実に対して、「じゃあ、気をつけよう」となってしまいがちです。

ですが、普段から「失敗」を前提として動いているので、その文面を見ても、それも起きるかもしれないのだな、と思うくらいだということです。

なので、起こりうる「マイナスの事象」が、1つ増えたくらいの感覚なのです。

それに加えて、日頃から、その文面の解釈の仕方が、興味深く感じています。

次は、その文章のアプローチの仕方について、触れていきます。

問題の解答を探すのではなく、自分が選んできた回答を解答にする。

ある1文を読んで、思うことは人それぞれです。

例えば、「机にりんごがあります」という文章があったとします。

机の上にあるりんごかもしれないし、机の横、もしくは、机の裏に張り付いているりんごかもしれません。

また、りんごとありますが、りんごの数は書いてありません。

りんごが1つあると思った人もいれば、2つあると思う人もいますし、2トントラック1台分のりんごで、机が埋まっている絵を想像する人もいるかもしれません。

こうした単純な文章1つとっても、解釈は異なります。

ましてや、「失物戻らず」「待人来ず」みたいな文面であれば、さらに、解釈の幅は広がり、思いをはせる内容は、人それぞれに異なります。

よって、書かれている文面や、判定結果が当たる当たらないではなく、自分が考え、導き出した回答をもって、その問題に対する模範解答にしているのです。

これが学校の勉強であれば、この方法は使えなかったかもしれません。

なぜなら、学校から出される問題には、解答が事前に用意されているからです。

ですが、経営に対する問題であれば、この考え方は使えます。

その理由について、次に考察をしていこうと思います。

常に初見で、いつも最初にして最後。

もし、経営に関する課題に対して、全て決まった解答があるとすれば、解答集を買ってきて、それを実践して課題解決です。

ところが、実際にはそうはなっていません。

経営者向けの小難しい本だと、「大きな物語の時代から小さな物語の時代へ」といった表現をされていることがありますが、実際にはどちらの時代にも、生きていた人はいません。

なぜなら、「大きな物語の時代」とか「小さな物語の時代」というのは、あくまでも過去を現代の視点から見て、そのように表現しているに過ぎないからです。

つまり、その時代が過ぎ去ってから、その時代や現象について名前をつけているため、名前がついた時には、もうそこにいた人は過去の人になってしまっているのです。

これを別の視点で見ると、2050年から見た2020年や2021年の騒ぎは、もしかすると滑稽なものかもしれません。

現代医療では大騒ぎする困難な感染症であっても、30年後の医療やテクノロジーでは、基本問題程度の小さい課題になっている可能性が、極めて高いからです。

いま、触れた事例は、ほんの一例ですが、過去(歴史)をひも解く時に注意しなければならないのは、現代から見た過去という視点ではなく、その時々の前提に基づいて、その歴史的事実やその時された解釈をする必要があるということです。

効率化できない、定型化できない、言語化できない。

占いと少し似ている部分で言えば、「周期」が好きな人も多いですね。

例えば、約10年ごとに不況が起こるとか、70〜80年ごとに大きな地震や戦争・争乱が起こるとか、そういった周期(サイクル)です。

これも面白い指摘だと感じるのですが、その事実がこれからも当てはまるかどうか、とか、予想が当たるかどうかは、経営者の方で気にされている人は多くありません。

むしろ、どっちが来ても事業が続けられるように、日夜考えて動かれている印象が強いです。

そして、これもある種の揺り戻しなのかもしれないのですが、不況になると、占いの熱が高まるように思います。

また、危機や非常事態が起こると、今まで当たり前とされてきた部分の負の側面が、明らかになって、変化を遂げるタイミングになることも多いです。

これは占いに限らず、効率化・定型化を得意としてきた事業が、個別具体的で、効率化も定型化もできない事業に生まれ変わる時期でもあります。

そして、一見すると新しい「効率化できない、定型化できない、言語化できない」事業は、これまで表面化されてこなかっただけで、今までもやってきたことです。

なぜそう言えるかといえば、どんな事業においても、全ての顧客に対して、全く同じサービスを提供し続けてきた事業は、この世に1つも存在しないからです。

つまり、「効率化できない、定型化できない、言語化できない」業務の割合は、それぞれの事業で違うにしても、この業務がゼロだった事業は1つもないということです。

1人として同じ顧客がいない以上、全く同じサービスしか提供してこなかったことはあり得ず、程度の違いはあるにしても、それぞれの顧客に対して、個別にカスタマイズして提供してきたと言えます。

おわりに。

さて、今回は、占いから話をスタートさせて参りました。

吉凶もさることながら、書かれている内容から、どのようなことを読み解き、それを事業に反映させていくか。

事業に限らず、世界は常に現在進行形しかないので、過去の現象に名前をつけるのは、他の人に任せ、これからも流れ続ける「現代」を泳ぎ切っていくことができればと思います。