はじめに。
今回のテーマは、「「本日ハ晴天ナリ」という言葉から考える、経営者の日々の意思疎通についての方法論考察」です。
テーマの表現を「意思疎通の方法論考察」と仰々しくしていますが、平たく言えば「コミュニケーションしていますか?」という投げかけです。
では、なぜこのような仰々しい表現を取ったのか。
それは、コミュニケーションが、言葉を通して行われているもので、それが原因で、意思疎通が図れていると思い込んでいることが、実は全く取れていないこともよくあるからです。
そして、その「図ることができていると思い込んでいるだけで、実はできていないコミュニケーション」は、「本日ハ晴天ナリ」という言葉から考えてみると、わかりやすいと考えました。
なので、今回は「本日ハ晴天ナリ」という言葉から、経営者の意思疎通の図り方について、考察を加えていこうと思います。
「本日ハ晴天ナリ」という言葉から見る、経営者のコミュニケーション論。
さて、ではさっそく本題に入ろうと思うのですが、今この記事を読んでいる方(あなた)は、「本日ハ晴天ナリ」と聞いて、何を思い浮かべますか。
今日は晴れているんだなと、思う人もいれば、マイクのテストをしているのかな、と思う人もいます。
放送のテスト思う人もいるでしょう。あるいは、曲のタイトルが「本日ハ晴天ナリ」で、その番宣とか。キテレツ大百科のコロ助のモノマネをしているとか。
いろいろ挙げることができて、キリがないと思います。
ですが、これって、そもそもどこからその違いが生まれてくるのでしょうか。
発している言葉は、「本日ハ晴天ナリ」でしかないですよね。
ちなみに、「本日ハ晴天ナリ。繰り返す。本日ハ晴天ナリ。」となるとどうでしょうか。
また、意味変わりますよね。「ニイタカヤマノボレ」みたいな、軍部の暗号か何かだと思っても、相違ないと思います。
そして、この文章で、冒頭から「本日ハ晴天ナリ」と表記したのですが、「本日は晴天なり」と表記を変えるだけでも、その印象はだいぶ変化します。
今お読み頂いているのは文章なので、書き言葉での表現となりますが、これは話す場合も同様です。
話し手は、表現する言葉を選ぶことはできますが、同時に、受け手の受け取り方まで、指定して選ぶことはできません。
そのため、経営者がある意図を持って、それを言葉にして表現しても、相手にはそれが全く伝わらずに、かえって誤解を招くことになる場合があるわけです。
発している言葉は相手に伝達していきますが、経営者が持つ「意図」までは、表現し切れていないことがよくあるからです。
では、その違いは、どこから生まれてくるのでしょうか。次に、そのことについて、考えていきたいと思います。
経営者が持つ「意図」が伝わる言葉。伝わらない言葉。
ここまで「本日ハ晴天ナリ」という言葉を通して、受け手の受け取り方が、発信した経営者の意図せぬところに飛んでしまうことについて、考察を加えてきました。
思うところは、人それぞれですと。
経営者が持つ「意図」が伝わる場合と、伝わらない場合には、どんな違いがあるのでしょうか。
それは、経営者の持つ背景を、どれだけ具体的にわかりやすく、伝えることができたかにかかっています。
つまり、経営者が見えている視点を、どれだけわかりやすい言葉で、それが見えない相手に伝えることができるかどうか、ということです。
経営者は、会社ではトップであることはもちろん、社外においても、トップとして応対してもらえるため、勘違いしてしまいやすい生き物でもあります。
ですが、「これくらいわかるだろう」と言葉による説明を怠ると、最初は小さかったすれ違いも、最後には大きな断層となって、相手との関係も崩壊しかねません。
そして、経営者が見えている視点は、実は、取引先のトップならまだしも、会社の一従業員である社員や幹部には、全くわからないこともよくあるのです。
しかしながら、それを経営者でない相手がわからないからと、説明せずにいると、関係性が決裂する結末を迎えてしまいます。
見えていないほう(社員や幹部)から経営者(社長)に説明するのは困難で、やはり、その視点を見ることができている経営者(社長)から、見えていないほう(社員や幹部)に向けて、丁寧に説明するのが、自然な流れといえます。
では、一体何を伝えると、経営者の意図するところを伝えることができるのでしょうか。
次に、このことについて、考えていきたいと思います。
「マネジメント」という言葉の、空々しさ。
ここまで、経営者の意図をどのようにして伝えるか、ということについて、お伝えしてきましたが、よく経営管理の場面で、「マネジメント」という言葉を用いられることがあります。
ですが、そもそもこの「マネジメント」という言葉が、作らなくても良い壁を作っているのではないかと考えています。
会社の経営に関して、「管理する者」と「管理される者」に分けられると思いますが、前提からして、間違ってしまっています。
どういうことか説明すると、そもそも社員を「マネジメント」することは、原理的に不可能であると言えるからです。
そして、その背景には、今日ここまでお伝えしてきた「本日ハ晴天ナリ」の伝わり方を、例に出した通り、経営者自身は話す言葉を選ぶことはできても、受け取り側である社員の受け止め方までをコントロールできないという前提を、無視した言葉だからです。
言い換えれば、「マネジメント」という言葉によって、経営者と社員の間に、本来はないはずの優劣をつけてしまっているのです。
構造上、会社を作って運営している経営者と、そこに契約を結ぶことで属している社員がいるだけであって、どちらが偉いとかどちらが偉くないとかではなく、単純に役割に違いがあるだけなのです。
そこを勘違いして、あたかも社員をコントロールするかのような「マネジメント」という言葉を使って、考えているから、起こさなくて良い問題が発生するし、コミュニケーションのズレが生まれてしまうのです。
おわりに。
今回の考察では、「本日ハ晴天ナリ」という言葉から始めて、経営者の意図を伝える方法、そして、「マネジメント」という言葉を用いてしまうことで、引き起こされる問題について、お伝えしてきました。
経営者と社員の間に存在する役割の差を、人間の優劣や上下関係に派生させてしまっていることで、あたかも社員がコントロールできる前提で用いられてしまっている「マネジメント」という言葉。
経営者の日々のコミュニケーションにおいても、こうした背景の言語化のように、自らが考えている視点をいかにわかりやすく、それを見たことがない相手にも伝わる言葉で伝えることができるか。
そこにヒントが隠されていると言えます。