はじめに
今回のテーマは、「ウェブ制作屋の終わり」ということで、考察を加えていきたいと思います。
現在では、ホームページのない会社というのは、基本的にはありません。
Amazonが日本にやってきた2000年代初頭に、日本では流行らないと言われてきたEコマース(EC)は、今では生活に必要なインフラの一角を担っています。
ですが、同時にウェブ業界は、常に断崖絶壁の上に成り立つような世界でもあります。
どうしてそのように言えるのか。
今日はそんなところからお話を進めていきたいと思います。
「ウェブ制作屋」が死に体な理由。
死に体というのは、もともと相撲の用語で、「両者がほとんど同体に倒れたとき、つま先が上を向いて足の裏が返り、立ち直れないと判断された状態」を指し示します。
簡単に言えば、バランスを崩して、ふらついている状態です。
では、なぜ「ウェブ制作屋」が死に体なのでしょうか。
確かに、一見すると、ウェブを含めたIT業界は、もはやインフラであり、この世界には、なくてはならないものであると見えます。
そして、そのため「ウェブ制作屋」は、今後も必要とされ続けると考えがちです。
しかしながら、同時に、「ウェブ制作屋」に頼まずとも、自分でホームページやECサイトを立ち上げて、物販の仕組みを構築することすら可能になってきています。
自分で立ち上げて、自分で管理を行い、自分で販売網の整備や顧客とのやり取りができるわけですから、当然のことながら、外部の「ウェブ制作屋」は必要ないわけです。
加えて、以前に比べると、サーバーの管理なども簡易になってきていますし、何より自分で作れば、イニシャルコストもランニングコストも掛かりません。
実際に在庫を抱えたり、賞味期限を持つような商品であれば、定期的な管理も必要になってきますが、それは今までの流通業でも、同じだけの労力がかかっています。
そのため、ECの仕組みができたからといって、今後も必要な労力に変わりはありません。
また、「ITに疎い」という人がまだまだ主流で、ウェブ関連の技術に関して詳しい人が、一部だった時代とは異なり、今や年配の人でも、多くの人がスマートフォンを使い、子どもや孫と連絡を取る時代です。
つまり、一部の物好きが好んで使っていた時代とは異なり、誰でもその技術に触れ、誰でも使いこなせるインターフェースになってきているのです。
そこへ来て「ウェブ制作屋」など、果たして必要なのでしょうか。
むしろ、今後は運用も含めて、最初から自分でできるようになるため、ますますその需要はなくなっていくものと考えています。
では、斜陽産業となりつつある「ウェブ制作屋」の中で、どのような人たちが、今後は生き残っていくのでしょうか。
次の章では、この点について、見ていきたいと思います。
かつて「ウェブ制作屋」だった企業の今。
現在でもホームページの制作は、事業の1つとして成り立っています。
もちろん、遅かれ早かれ、そうした事業は消えてなくなるか、サービスオプションの1つとして残る程度で、メインのサービス提供からは外れるものと見ています。
理由は、先ほどもお伝えした通り、誰でも簡単にできるので、外部の「ウェブ制作屋」は必要とされないからです。
利益率20%ほどの企業で、外部に制作費用として、100万円を支払ったとすると、それを巻き返すためには、500万円の売上が必要になります。
個人系やマイクロ法人系で、この規模ですから、中小企業や大手になればなるほど、IT関連の費用は膨大なものとなり、それを巻き返すだけの売上が必要とされることは、言うまでもありません。
そのため、制作屋に何百万と支払うような状況は、今後も先細りしていくものと思います。
そして、そもそもの問題なのですが、個人や法人は、なぜウェブサイトを必要としているのでしょうか。
最後にこの点について、触れていき、今回のテーマを終えたいと思います。
そもそも、なぜ「ウェブ制作(ウェブサイト)」は必要なのか。
個人的に、商売の基本は「駄菓子屋」にあると考えているので、「駄菓子屋」を例に考えてみたいと思います。
まず、ホームページ。
要らないですよね?
理由は、「駄菓子屋」に通う人は、基本的にスマホなどの情報機器を持たされていない、小学生がメインだからです。
もちろん、今後は小学生のみならず、幼稚園生や保育園生でも、スマホを持つような時代が来るかもしれません。
そうすると、「駄菓子屋」も難しいかもしれません。
ただ、同時に、大手のドラッグストアがLINEで、毎週月曜日に10%クーポンを配布するように、駄菓子屋でもペイアプリが使えて、
駄菓子屋の店主が、Instagramで新しい駄菓子の入荷情報などをアップしたら、面白いかもしれません。
では、駄菓子屋が効率化されて、無人コンビニのように、自動レジ・自動精算となっていくのでしょうか。
これは、駄菓子屋に行く人(主に小学生)が、何を求めて駄菓子屋に行くのかと、駄菓子屋の店主が、どのような意図を持って、駄菓子屋を営んでいるかにもよりますが、おそらく、そうはならないはずです。
理由は、駄菓子屋に効率化を求めているわけではなく、むしろ非効率とされている「人間同士のやり取り」とか「駄菓子屋の店主との、たわいもないやりとり」を、必要としているからです。
一見すると、関係の無いように見える、ここまでの「駄菓子屋」を例にした考察は、これからのウェブ制作にも、通底する内容です。
むしろ、効率化され続け、セグメント化され続けてきた「商売」というものを、「そもそもどういうものなのか」という視点から見つめ直していかないと、
死に体である「ウェブ制作屋」だけでなく、すべての商売が終わりを迎えます。
そうした未来を回避するためにも、日々思案していき、布石を打っていきたいところです。
おわりに
今回は、「ウェブ制作屋の終わり」というテーマで、お届けしてきました。
今回のテーマは、何もウェブを含めた技術革新の激しいIT業界に限った話ではありません。
むしろ、古い産業で、今後はなくなると言われているような斜陽産業もまた、その対象に含まれています。
そして、なぜ比較的新しい産業だけではなく、古い産業にもまた、同様のことが言えるのか。
この点を考察していくと、今回の記事が、さらに活かせるのではないかと考えています。