はじめに。

改めまして、新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。

さて、今回は、多くの会社が仕事始まりの週ということもあり、改めて、経営者の思考、特に、抽象思考に重点を置いて、考察していきたいと思います。

経営者の仕事は、考えること。

でも、「考える」って何をすることか、ということを考えてみたことはあるでしょうか。

普段、自社にまつわる、ありとあらゆる問題について、日々思考していると思います。

ただ、今回は、問題のほうではなく、「考える」ことに着目して、記していきたいと思います。

世の中に存在する、ありとあらゆる経営課題。

世の中には、重要かつ緊急性の高いものから、急ぎでもなければ、重要でもない問題まで、ありとあらゆる問題が存在しています。

よく、思考の本や、論理的思考・ロジカルシンキングの本などで、2×2のマス目を作って、表にしている本もありますね。

そして、重要かつ緊急性の高いものは、もちろん、早く考えて結論を出し、すぐに対処する必要があります。

その一方で、重要なのに緊急性の低いものは、置き去りにされがちなので、ここを大切にしましょう。みたいな感じです。

もちろん、これはこれで良いのですが、気になるところがあります。

それは、この「重要」とか「緊急性」って、そもそもどのようにして決まるものなのか、ということです。

先方が急ぎと言ったから緊急性が高くなったり、経営者自身で重要だと思うから重要になったり、極めてあいまいなものなのではないでしょうか。

でも、実際には、多くの仕事がある中で、先方が急ぎと言っても、実際には何日か猶予があったり、重要だと思っていたことが重要ではなかったりすることも、往々にしてあります。

なので、もしこの表を作って、重要性と緊急性を判断して、表の事項を振り分けるのであれば、そもそもの振り分けの「判断」の精度を高めていく必要があることに、気がつきます。

言い換えれば、その「判断」の精度を高めるために、思考の純度や多面性、背景を見る視点など、ありとあらゆる側面から、思考というものに目を向けていく必要があるということです。

経営者の輪に入っても、個人の思考力は育たない。

では、その思考というものに目を向けるためには、どのようにすれば良いのでしょうか。

多くの場合、取る方法は大きく分けて2つで、そのうちの1つをこの章で、紹介していきます。

1つは、自分より先を行っている経営者に、教えてもらうことです。

先輩経営者から、教えてもらうことで、自社の経営にも大きく変化をもたらすことができると言えます。

実際に、大手企業だと社外取締役とか、外部執行役員のような形で、社外から専門家をよんで、会社の経営について、助言を受けています。

中小企業などでも、顧問という形で、外部から専門家や経営者を招き入れて、会社経営を支援してもらうケースが多くあります。

これ、一見すると、良い方法に見えますよね。

でも、実際には、ある視点が欠けているのです。何だと思いますか。

それは、どんなに多くの精度高い有用な助言を受けたとしても、最終的に判断するのは、経営者であるその人自身であるということです。

当たり前ですが、あえて記しておくと、そのアドバイザーに言われたからといって、何の考えも無しに、実践する人は、まずいないと思います。

もちろん、全ての責任を覚悟の上で、思い切ってやってみるという経営者もいると思いますが、ほとんどの場合、そうはならないでしょう。

優秀なアドバイザーを見極めて、招き入れたり、助言を受けたりするのは、とても良いことです。

ただ、助言を受けたり、招き入れるための、経営者の思考(判断)が不可欠で、ここを避けて通ることはできないのです。

ビジネスの講座、独学の勉強。

さて、前の項で、思考というものに目を向けるために、取る方法は大きく分けて2つという話をお伝えしました。

なので、この項目では、もう1つのほうに目を向けて、見ていきましょう。

先程の項でもお伝えした通り、優秀なアドバイザーを迎えて、助言を聞くことは問題ないことを記しました。

けれども、たくさん受けた助言の中から、取捨選択をして、経営判断を下すことができるのは、その会社の経営者その人にしかできないということも、見てきました。

では、思考に対して、どう目を向けるか。

それは、経営者自身が、力をつけて強くなるということです。

おそらく、すでに、会社を経営されてきているので、それを目指して、強くなるために、アンテナを巡らせながら、日々研鑽されていると思います。

なので、本来であれば、わざわざ言うほどのことではありません。

ですが、問題は、何をもって、研鑽されているかが問題です。

これも、多くの場合、大きく分けて2つのラインがあり、1つは、ビジネスの講座を学びにいく。もう1つは、独学で本を読んで勉強するという方法があります。

中には、というか、多くの方が両方されていると思います。

それでは、内容はどのようなものでしょうか。

講座でも書籍でも、そうなのですが、数こなしていくと、徐々に、抽象度が上がっていきます。

例えて示すとしたら、こんな感じです。

(同名の書籍があったとしても、それとは一切関係はありません。抽象度が上がる一例として、用いています。)

「今すぐ使えるロジカルシンキング」→「MBAクリティカルシンキング」→「論理的思考とは何か」

最初の本の具体的なところから、抽象的なテーマへ移行しているのがわかります。

ここからもわかる通り、日々経営者自身の思考を高めるために、独学されているとすれば、自然と同じような道をたどっているかと思います。

読み進めていくほど、具体的なテーマ100冊ではなく、抽象的なテーマ1冊となっていくのです。

この背景には、どのようなことが隠れているのでしょうか。

最後の項目では、そこに触れていきたいと思います。

抽象度を高めた世界観の言語化。

先ほど、具体的なものから抽象的なものへと、移行していくという話をお伝えしてきました。

これは書籍でも、ビジネス講座でも、同じ道です。

ただ、実際には、学ぶ順序が逆であるとも言えます。

例えば、「犬」という分類があります。

これは、具体的に、ポメラニアン、ゴールデンレトリーバー、柴犬と、具体的な犬を見て、このまとまりは「犬」と決めたわけではありません。

「犬」という分類が先にあって、それから、ポメも、レトリーバーも、柴も、犬だよ、と決めているのです。

なので、実際の流れは、「抽象→具体」なのです。

学びを深めていくと、具体的なものから抽象的なものに移っていくのは、本質的な思考(物事の視点)は、抽象にあるとわかってくるからです。

そして、抽象的な世界観に慣れていくと、かえって具体的な事例や経営課題が見えてくることになります。

だからこそ、抽象的な世界観を追い求めていくようになると言えます。

おわりに。

今回は、経営者の思考というところから、いくら優秀なアドバイザーをつけても、最終的には自分で判断する必要があることや、その「判断」の元となる思考をどのように高めていくかということについて、お伝えしてきました。

最初は具体的なものを学んでいたとしても、徐々にその抽象度は上がり、本質的な思考(物事の視点)にたどり着く、ということに触れました。

一方で、具体的なところから、徐々に抽象度を高めていく方法は、一見すると良いのですが、「犬」という分類を例に、分類(抽象)が先で、具体的な犬種(具体)が後であることについても、お伝え致しました。

このことからもわかる通り、具体を重ねた上に、抽象があるのではなく、抽象があって、初めて具体が存在するということです。

言い換えれば、経営者の思考において、注目しなければならないのは、抽象のほうであり、ここを極めていくことが、日々の自社の経営課題に取り組む思考に、つながっていると言えます。