はじめに。

さて、今回の記事では、言葉の世界を取り上げていきます。

年末年始に入り、ようやく一息ついた頃合いかもしれないですが、会社は休みでも、経営者に休みはありません。

今年1年のことも考えておきたいところですし、長期的な視野に立った計画を思考する時であればなおさらです。

また、日々の会社の社員の方とのやりとりの中で、言葉がかみ合っていなかったり、意味合いが正しく伝わっているかどうか、気になっている方もいらっしゃるかと思います。

このような視点を経由しながら、言葉というものをとらえ直し、新しい年を過ごして参りましょう。

言葉によって、理解できる世界。

言葉の性格は、違う言語と比較すると見えてくる部分があります。

例えば、日本語だけで比較するよりも、日本語とフランス語で、同じ意味合いの言葉を比較するという方法です。

日本語では、蝶と蛾を分けて、言葉で表現していますよね。

でも、同じ「あのひらひらと飛ぶ物体」を、フランス語では、パピヨンという言葉で表現しています。

日本語では、2種類の言葉があるのに、フランス語では、1種類なのです。

なので、日本語で言うところの蝶でも蛾でも、フランスではパピヨンなのです。

このような状況になるとどうなるかと言うと、フランスでは、蝶も蛾も、分別することなく、全部パピヨンということになるのです。

よって、蝶(パピヨンA)は蛾(パピヨンB)とすこし違った種類くらいの認識で、同じパピヨンとしての認識しかありません。

もちろん、細かく見分けることができるから、日本語のほうが優れているとか、雑多な括りでしかとらえることができないから、フランス語のほうが劣っているという話にはなりません。

ただ、そういう性質があるということは、事実として、確かに存在するということです。

言葉が同じであっても、意味が同じであるとは限らない。

先程の例は、何も日本語とフランス語の、蝶とパピヨンに限った話ではありません。日本語と英語にある「兄弟」と「brother」も、1例として、挙げることができます。

日本語には、先に生まれた兄と後から生まれた弟という概念があります。一方で、英語の「brother」にはそれがありません。

なので、どちらが兄とか弟とか、そういう概念が無いようです。

なぜ、このような事例について、説明してきたかと言うと、ある言葉が指し示す意味は、自らが考えている意味合いと異なる場合があるからです。

経営者の方であれば、幹部の方や社員の方とお話しすることがあるかと思います。

その時に、世間話ならば良いのですが、営業の戦略を考えていく際や、採用に関して、採用担当者と話を詰めていく際に、言葉の意味合いについて、注意が必要となってきます。

例えば、「会社の社風(カラー)に合う人」を選ぶというテーマがあるとします。

その際に、どんな人か考えていく前に、まず「会社の社風(カラー)」というものを言語化していく必要があります。

そして、「会社の社風(カラー)」を言葉にしようとすると、人それぞれに、積み重ねてきた年数が違うので、当然着目する視点が変わってきます。

なので、創業当時から携わっている経営者だからといって、「会社の社風(カラー)」をうまくとらえることができるかどうかは、全く別の話です。

それに加えて、言葉にした「会社の社風(カラー)」は、どれも間違いではなく、どれかだけが正しいわけでもありません。

むしろ、「会社の社風(カラー)」がどんなものであるかを考えていく過程の中で、言葉に表していく途中にこそ、会社の社風(カラー)が立ち現れてくるものと言えます。

だからこそ、言葉とその意味合いについて、丁寧に突き合わせて、担当者同士で意思疎通を図っていく必要があります。

抽象を極めると、東洋思想の世界観に結びつくこともあるが。

何か物事を考えていくと、どんどん抽象度が上がっていきます。

何かの物事→その理由と背景→その理由と背景→その理由と背景→その理由と背景・・・

と、どんどんその根本的な理由と背景について考えていくことになるからです。

また、具体的な事柄どうしを結びつける際にも、抽象度を上げて物事をとらえています。

例えば、飛行機、新幹線、バス・・・と考えると、これらって全て「乗り物(交通機関)」ですよね。

競合他社がいる会社が大半だと思いますが、自社の属する業界の他社を研究されている方は、たくさんいらっしゃいます。

しかしながら、正直なところ、他社を研究すればするほど、どれもこれも同じようなものになってしまいます。

そのため、それだけでは差別化にならないのです。

なので、全く別のところから引っ張ってきて、それを抽象度を上げて、自社に応用していくという視点が必要になってくるのです。

思考を突き詰めた経営者が、東洋思想に傾倒している方がいらっしゃるのも、こうした背景があると言えます。

抽象世界を極めると、実業の世界では、近い世界が無くなり、抽象度の高い世界観を体現している東洋思想に、抽象世界の言語化を求めているからです。

他者を理解できないという前提のもとに。

今回は、言葉の意味合いに着目して、それが決められたものではなく、かなり揺れているので、注意が必要だということを、触れてきました。

こう見ていくと、他者が理解できないことは当たり前であることも、背景とともに理解が深まってきます。

これは、社員を理解することはできないから、理解しようとはしない、ということではありません。

むしろ、理解できないという事実があるからこそ、より一層理解するべく、丁寧にコミュニケーションを図っていくということです。

その際に、言葉の意味の「揺れ」というものを理解した上で、相手が言った言葉がどのような意味合いで使われているのか。

こうした視点に立って、つぶさに考えていきながら、話を進めていくことで、より一層の成果や、その先にある自社の社会への貢献が見えてくると言えます。

おわりに。

今回は、言葉とその意味合いに着目して、具体的な例を交えながら、お伝えして参りました。

言葉は、文脈や背景、タイミングによって、意味合いが違ってきますが、そもそもこちらと相手で同じ言葉であっても認識が異なることがあります。

これは、本文で取り上げたパピヨンと蝶(蛾)の例でもありましたが、フランス語と日本語の違いというよりも、どの言語間でも起こる出来事であり、同じ言語内でも、起こり得ることでもあります。

本文では、それを言葉の「揺れ」と表現しましたが、この意味の「揺れ」を把握して、こちらと相手側での違いを小さくしていくことが、間接的に自社の存在感を示すことにもなります。

なぜなら、この言葉の「揺れ」の差異を埋めていく作業は、なかなか骨の折れる取り組みであり、そこまで言葉を丁寧に扱う人は、そう多くはないからです。