はじめに

今回のテーマは、「風はどこから吹いてくるのか」です。

ちなみに、これを読んで頂いている方が、この質問に答えるとしたら、どのように答えるでしょうか。

実は、この問いに対して、どのように答えるかによって、その人にとっての「風」が、実際にどこから吹いてくるのかが、分かる問いでもあります。

さて、「風はどこから吹いてくるのか」。

本日は、そこから考えみようと思います。

経営者が見る「風の吹く景色」

普通であれば、北から吹きますとか、南から吹いているので、今日は温かいですね。となります。

方角以外で、お答えになった方はいらっしゃるでしょうか。

この時、どこから吹いてきたかどうかを答えることも大切なのですが、そこ以上に、大切なことがあります。

それは、理由について考えてみることです。

人によっては、思い浮かんだ答えが恥ずかしく感じてしまい、違う答えを探し始めてしまうこともあるのですが、

実際には、「その恥ずかしい答え」が、他の人にとっては面白かったりもします。

ただ、どの答えを自分自身の答えに出すとしても、やはり、理由について考えておきたいところです。

しかも、できれば複数です。

よく、物語の構成や伏線を張る際に、異なる世界線を編んだ物語設定が組まれていることがあります。

タイムリープ(主人公が、今の状態のまま、過去や未来に転移するといった時間軸だけを飛ぶ)設定も、その代表的な例ですね。

時代によって、描き方は変化していますが、実写版やアニメ版を含めた「時をかける少女」は、タイムリープの不朽の名作ですね。

話は少しそれましたが、その時間、その主人公が、その行為をすることは、すべて意味があり、理由があります。

そこまで緻密に考えなくても、日々の思考の中で、答えを考える以上に、その理由付けについて考え見ると、「なぜ、そのように考えることができたのか」をたどることもできます。

以上の理由から、問いの答えとともに、回答の理由について思いを馳せることについて、触れました。

風は、明日から吹いている

さて、先ほどの章での、方角以外の回答ですが、「風は明日から吹いている」という言葉を、先日聞きました。

曲の歌詞に含まれていたのですが、方角以外の回答を考えた人は、作詞や詩歌の詠(うた)い手にも向いているかもしれないですね。

それはさておき、先ほどの章での後半で、時空間の移動についての設定に触れましたが、これは、「風は明日から吹いている」という言葉を紹介するためでもありました。

ある種の伏線です。

よく「発想を飛ばす」とか、思いつかないようなアイデアを、経営に活かすといった話題がありますが、

おそらく本当に「人が思いつかないような発想」だとすれば、それは文字通り、人間には理解できません。

どんな発明や天才と呼ばれた人たち、あるいは、時代の先を行き過ぎてしまった偉人なども、

それをその時代に合わせて、その時代の人々に、その人がすごい理由を説明できる人がいなければ、現代視点では偉人でも、当時はただの「意味不明な人」です。

そのため、「誰も思いつかないような発想」というのは、あくまでも、その発想や発案は誰にも理解できないものであっても、

その理由説明を、現代(その時代)のルールに合わせて、そこに住まう人々の理解の範囲内で、行っていく必要があります。

言い換えれば、その偉人がなぜすごいのかを、その時代の人々に説明できる人が必要になる、ということです。

では、そのような位置にある人は、どのような言葉を探し求め、紡ぎ出し、それを理由として、述べているのでしょうか。

最後にこの点について、触れていこうと思います。

「風」の通訳者と翻訳家

今回の論考から、東洋思想が好きな人は、いろいろと思いを馳せることができたかもしれません。

また、今までの投稿で挙げたような、占いやおみくじが好きな人も、思うところがあったかもしれません。

ですが、おそらく、その発想だと「斜め上の発想」は出てきません。

理由は、その文脈であれば、一般の人でも、なんとなく理解できてしまうからです。

つまり、「どこかで聞いたことのあるような説法と解釈」になってしまう可能性があるということです。

もちろん、誰が話をするかという点も重要な場合もありますので、これをお読みになっている経営者の方が、言葉を発すれば、理解を示す社員もいることと思います。

ですが、相手(社員)の「察する力」を当てにするのではなく、相手(社員)が納得できる、わかる理由を、こちら(経営者側)から加えられていたらどうでしょうか。

抽象的な話から、一気に具体的な話になり、そこから着想を得る社員も少なくないはずです。

経営者は、「よくわからない発想の持ち主」であると同時に、「よく分かる理由づけの天才」でもある必要があると言えます。

経営者自身が、地球外の言葉を話しながら、自分で自分の話したことを、地球言語に同時通訳・同時翻訳するようなイメージです。

ある有名な映画で「考えるな、感じろ」という台詞がありましたが、あの映画は、ディレクターズ・カット版で、その部分の理由説明や背景を語ったシーンがあったと言われています。

どういうことかと言うと、「考えるな、感じろ」というのは、文字通り、「考えなくて良いので、感覚を研ぎ澄ませ!」という意味ではないということです。

このことから考えると、「考えるな、感じろ」というのは、「感じた部分」の理由を言語化せよ、という意味にも解釈できます。

そして、この名台詞をパロディとして、「指を見るな、月を見よ」と語った作品もありました。

どこまで見えているかは、もちろん大切なのですが、それを知った上で、どこまで、どのような深さで、その理解した内容を言葉にして、相手に伝えることができるのか。

この事実から、経営者が、会社に一人しかいない理由が、透けて見える気がしています。

おわりに

さて、今回のテーマは、「風はどこから吹いてくるのか」でした。

「言葉では説明できない」という言葉をよく聞きますが、「言葉では説明できない」という言葉を使っている人で、「もう言葉を使って説明してしまっている」と思いながら、説明している人は、そこまで多くありません。

もちろん、不意に出てしまった言葉なのかもしれません。

ただ、そこから「言葉では説明できない」って、言葉で説明しているじゃん、と自分自身を笑うことができると、

それこそ、世の中と違った「斜め上の発想」が出てくるのではないかと考えています。