はじめに
今回のテーマは、「ゴールからの逆算思考と、抽象からの逆算思考」についてお伝えしていきたいと思います。
現在では、数年前ほどもてはやされなくなりましたが、かつて、国内外のコンサルティングファーム出身者の思考法に関する書籍が流行った時期がありました。
それぞれになかなか面白い思考法が、載っていたのですが、そもそも書籍そのものが、書き手や所属している企業、代表を務める法人の宣伝のための本なので、そこから本気で、思考法を身につけようとする人もいないと思います。
ただ、書かれている裏側を読めたり、独自解釈を編み出したりできる人にとっては、こうした本もなかなか面白いと言えます。
そんな数ある思考法(考え方)のなかで、今回は「逆算思考」というものに、着目したいと思います。
というのも、一般的に言われている逆算思考と、経営者層が実際に行っている「逆算思考」には、大きな隔たりがあるからです。
次の章では、まず、この大きな隔たりについて、考察を始めていきます。
逆算思考と「逆算思考」
結論から伝えるスタイルや、結果から考えるスタイルは、文字通り反対から考えている逆算の思考であると言えます。
もちろん、結論から考えたり、結論から話を始めたりすることは大切です。
相手も時間がありませんし、冒頭の結論をパッと聞いた感じで、筋が良いかどうか見えてしまうからです。
ただ、これは今もなお流行り続けているコピーライトや、セールスライティングの文脈でとらえてしまうと、ほかの事業者と同じような感じになってしまい、
結果的に、当たり外れの域を出ないものになってしまいがちです。
A/Bテストは肝要であるものの、A/Bテストにかけるための素材がだめならば、そもそもそのテストが無為なものになってしまうからです。
これを結論から考える逆算思考に当てはめると、いくら逆算思考をしたところで、逆算思考を行う内容がお粗末なものになるならば、その逆算思考は意味のないものであるということです。
表現を変えれば、逆算思考以前に、工程をいくつか考えたり、実際に組んでみたりする必要があるということです。
ただ、一般的な逆算思考の考え方が、経営者層が実際に行っている「逆算思考」とかけ離れてしまっている背景には、もうひとつ原因があると見ています。
次の章では、この隔たりの背景にあるものについて、考察を進めていこうと思います。
「逆算思考」を、「逆算思考」という言葉を使わずに説明する
ある概念を説明する時に、その概念の名称を用いることはできません。
辞書を例に考えてみると、より身近に感じることができると思いますが、こんな例で考えてみましょう。
例えば、「りんごとは何か」と疑問に思い、「りんご」という項目を調べたとします。
その時に、「りんごはりんごです」という説明では、説明になっていないですよね。
赤くて丸い球体状の果物とか、日本だと青森や長野で、よく生産されていますとか、そんな説明になるかと思います。
これは、りんごの説明なので、これでよいかと思いますが、具体的なモノやコトではなく、概念の説明となると、少し話が変わってきます。
これも例を出してみると、「教養とは何か」ということを、説明するとしましょう。
参考例として、「教養」という言葉を、独自の解釈で説明を加えてみると、教養というのは「現在進行系」のような趣きです。
ここが現在進行「形」ではなく、現在進行「系」というのがポイントです。
国語の文法的な「形」ではなく、教養というのは、ファッション業界における「モード」という言葉のように、デザイン性に富んだものであると考えているからです。
これは何も、デザイナーや芸術家の専売特許ではなく、むしろ一般のビジネスマンこそ必要な概念であると言えます。
このように、「教養とは何か」を説明する時には、「教養」という言葉は用いられないし、用いる必要もないということです。
では、最後に、これが今回のテーマである「逆算思考」とどのように結びつくのかについて、考えを進めていき、このテーマを終えようと思います。
「逆算思考」という「モード」系
ファッション業界の文脈では「モード」は流行という日本語を当てられることが一般的ですが、この文章における「モード」は、すこし違った文脈です。
というのも、この文章でお伝えしているカギカッコが付いている方の「逆算思考」には、反対から考えるという文脈や、結論から考えるという文脈以上に、大きな役割を果たしている文脈が存在しているからです。
それは一体どのようなものなのでしょうか。
反対、結論、に加えて、「抽象」が必ず入っています。
もちろん、感覚的な天才肌の経営者もいれば、論理的でデータ思考の経営者もいます。
なので、表面的なタイプには、それぞれに違いがあるのですが、彼らどのタイプにおいても、思考から「抽象」を外している経営者は一人もいません。
むしろ、反対から考えたり、結論から組み立てたりするのは、思考がすべて、この「抽象」から組み立てることが多いからです。
なぜそうなるかというと、具体的な事象から考える場合は、どうしても例外が発生してしまうため、思考の純粋性と独創性が担保されないからです。
言い換えれば、最初から抽象的に考えたほうが、具体的に考えた場合に発生する例外事項に関しても、予め把握して考えることができ、抜け漏れを少なくして考えることができると言えます。
言葉の性質上、Aという言葉は、ある言葉の抽象概念であり、ある言葉の具体的事象を指し示します。
つまり、その言葉は、言葉全体から見れば、抽象的でも具体的でもあり、全体の一部を成しています。
見方を変えれば、言葉は含まれたり、含んだり、全体を成したり、部分を形成したりするということです。
だからこそ、今回のテーマでお伝えしてきたカギカッコつき「逆算思考」が、一般的に言われている逆算思考と異なっていて、両者には大きな隔たりがあるといえるのです。
おわりに
今回は、「ゴールからの逆算思考と、抽象からの逆算思考」というテーマでお届けしてきました。
逆算思考は、文字通り逆から考えているわけではなく、抽象から考えているものということに着目して、言語化してきました。
そして、言語化する際にも、抽象を言葉にするため、言語化した文面も抽象化することになります。
このようにとらえていくと、抽象的に逆算思考することが、単純に抜け漏れがないという話ではなく、抽象が具体概念を包有しているということに対しても、感覚がつかめてくると言えます。