はじめに

今日のテーマは、「何をもって「パクリ」とするのか」です。

よく、良いビジネスを取り仕切りたければ、うまくやっているビジネスの真似をする、というエピソードがあります。

ここで問題になってくるのは、どこまでがパクリ(同じ)で、どこからがパクリではないのか、という点です。

同時に、うまくパクっている事業は、同じではなく、どこに違いを出しているのか。

今日はこの点について、考えてみたいと思います。

「パクリ」と「パクリではない」の違い

さて、そもそも何でパクリになってしまうのか、という点から考えてみましょう。

誰しもが何かしらを参考にしているわけで、ビジネスにおいても、その点は変わりません。

しかしながら、あるサービスは、パクリであると批判される一方で、あるサービスは、そうした声が出ないという違いが出ることがあります。

これは、一体なぜなのでしょうか。

それは、そもそもパクっている点が違うからだと言えます。

まったくのコピー商品であるならば、それはパクっていると批判されても仕方がありません。

しかしながら、そうした批判を受けるコピー商品が世にはびこる一方で、似たような商品なのに、発展させたものであると、認識してもらえる商品もあります。

これは、既存商品を発展させたことで、顧客の問題を解決に導いた商品であることと、その商品が既存商品から真似した点が、抽象的なコアの部分に留まっているということです。

つまり、表面的な商品やサービスを真似したのではなく、その既存商品では解決できなかった問題を分析した上で、パクった商品を打ち出していると言えます。

そのため、こうした商品は、既存商品をパクっているという話にはならず、むしろ発展的な商品として、一目置かれる存在になると考えています。

では、抽象的なコアな部分を真似している、という点についてはどうでしょうか。

これは、商品やサービスを真似する上で、削ぎ落としてはいけない部分と削ぎ落としたほうが良い部分を見極め、

その上で、その商品やサービスが解決できる表面的な問題ではなく、サービスを受けたり、商品を手に取る顧客が、気がついていなかったことに、フォーカスを当てるという意味です。

なぜこのようなことを記しているかと言うと、顧客が問題だと思っていることが、必ずしも本当に問題だとは限らないからです。

では、どうして、このようなことが言えるのでしょうか。

顧客が気がついていないこと

商品購入やサービス提供前の時点で、顧客が問題だと思っていることは、実は問題でないことがよくあります。

自社の商品やサービスに関しては、自社の経営者と社員が一番知っていると思いやすいのですが、それは一側面にしか過ぎません。

ある部分に関しては、よく把握できていると言えますが、それ以外の部分に関しては、むしろ、外側から見た顧客や外部の事業者のほうが、よく知っています。

理由は、自社の商品やサービスを、顧客として体験することが困難だからです。

反対に、自社の商品やサービスを、自社の顧客視点で体験することができれば、この問題は解決することができます。

このシステムを一番体現していたのが、Apple創業者である故スティーブ・ジョブズ氏ですね。

氏は、経営者にして、自社商品の一番のユーザーであったと伝えられていますが、このレベルでない限りは、なかなか自社製品を顧客視点から分析することは困難です。

だからこそ、外部事業者を通して、自社を観察しながら、今後の事業展開に関して策を練る経営者が多いと言えます。

本当の問題は「パクリ(同じ)」かどうかではない

ここまで、パクリとそうでないものの線引きについて考察を加え、顧客が問題だと考えていることは、実は本当の問題ではないことがある、という点についてお伝えしてきました。

顧客視点を実際に体験することは、自社単独では難しいですが、

他の事業者や顧客、顧客の声を聞き取るためのサービスを用いていくと、ある程度把握することができる点についても、触れました。

ですが、そもそもの原点に立ち返ると、実のところ、「「パクリ(同じ)」かどうか」はさほど問題ではありません。

以前、ある大手メーカー同士で、自社の商品同士をめぐり、訴訟沙汰になった案件があった時を記憶していますが、

結局、その2社は、両者とも市場からいなくなったと記憶しています。

先端技術やオリジナル商品、先進的な発想など、商標や特許など法律で守られているものからそうではないものまで、いろいろとありますが、

事業者が、どこに目を向けているかは、顧客から見ると一目瞭然です。

事業者が顧客を見ていないと感じると、自然と顧客が志向している商品やサービスと合わなくなってきて、最終的に市場から退場を余儀なくされます。

反対に、顧客も気がついていない顧客の問題点に気がつき、それを解決するような商品やサービスを提供することができれば、自ずと評価もついてくると言えます。

それくらい、何が問題であるかどうか以前に、そもそも本当にそれが問題であるのか、という視点が必要であると考えています。

おわりに

今日のテーマは、「何をもって「パクリ」とするのか」でした。

うまくパクっている事業者は、そもそも、既存商品をそのまま丸パクリした上で、世に問うような真似はしません。

むしろ、既存商品は、完成された商品やサービスであることは少なく、どんなに成熟した産業であっても、まったく問題のない商品やサービスは存在しません。

既存商品やサービスは、現時点で「もっともマシ」なだけであって、必ずしも問題を解決できるとは限らないからです。

そして、現状売れているからといって、たまたま売れているだけの商品に慢心していると、あっという間に顧客と志向のベクトルがズレてきて、売れなくなってきます。

こうした変化は徐々に来ることもありますが、ある日突然、他社が、自社商品や提供している商品・サービスが解決できていなかった問題を解決するものを打ち出してきたために、

自社商品が全く売れなくなってしまうこともあり得ます。

こうした観点で見ると、売れていても売れていなくても、そもそも自社で取り扱っている商品やサービスは、そもそもなぜ提供しているのか。

こうした視点は、ことあるごとに振り返っておきたいところです。