時世に合わせて変化することは、悪いことなのか

一般的に、朝令暮改というと、言っていることが定まらない、といった負の文脈で語られることが多いです。

辞書で意味を確認してみると、「方針などが絶えず変わって定まらないこと」とあります。 この解説からも、朝令暮改は、どちらかというと、悪い意味で用いられています。

しかしながら、現代の世界において、本当に文脈(時代)に沿った使われ方をしているので しょうか。

この元の意味の出典として、明治時代の陸羯南という思想家の言葉を引用したり、古くは、 漢書(中国古代)の時代の言葉が載っていたりします。

これは、どういう意味をなすか。 少なくとも、100年以上前の言葉が由来になっている、という事実がわかります。 よって、今の時代に即しているかどうかは、全く関係ないことになります。

世の中が懐古的になった時、危険を感じることができるかどうか。

個人的に、昔話をする年配の方を悪く言うつもりはありません。それはそれで良いと思いますし、個人や家族、親戚の間で話をしている分には良いでしょう。

しかしながら、世の中の流れが、「過去を懐かしむようになってきた」としたら、そこに危険 信号を感じます。

鎌倉時代に、武家に権力を奪われた貴族たちが、過去の栄光を懐かしむように、有職故実 (貴族や武家の儀式・礼法)の研究をしていました。

鎌倉時代の他の時代においても、同様の傾向があった時期があるとも言われており、どの時代も最終的には衰退して移り変わっています。

「過去を懐かしむ」ことが、次の時代への準備だとしたら、目先には衰退や停滞で騒いでいることも、冷静に対応できます。

生き残ったのは、強いものではなく、変化に対応できたもの

平成の後期から令和にかけて、大企業といえども潰れる時代になりました。

一寸先は闇で、かつてのように、先行している海外の成功事例を真似すれば上手くいく時代 も過ぎ去りました。

資本の力の差はあるものの、ある意味でほとんどの条件が対等になりました。

理由は、潰れやすいのは、大なり小なり同じだからです。そして、先行き不透明なことも同じです。

そういう点で、大きな物語の時代は過ぎ去り、令和時代という小さな物語の時代の幕開けと 表現できます。

そして、企業規模が大きいから生き残ることができるのではなく、時代に対応して、顧客と ともに進むことができる企業が求められていると言えます。

また、偽物が生存できる時代は終わり、真に顧客に貢献できる者だけが、生き残ることを許 される時代である、と示すことができます。

今朝言ったことだけではなく、現在の時流に合わせて、過去を手放すことができるかどうか

こう考えてくると、冒頭で朝令暮改の話をしましたが、もはや変わることのほうがスタン ダードと言えます。

それは、変化する時代において、変化しない企業は、取り残されて、最終的には淘汰される 運命にあるからです。

そして、有職故実の例でもあった通り、時代の変化に対して、過去を手放すことができるか どうか、にかかっています。

企業で過去を手放すとなると、自然と自社の否定となってきます。

自社の否定とは、自社を選ばない理由や買わない理由など、自社に対する否定的な視点と向き合うことです。

過去の栄光を否定するわけですから、そんなに気分の良いものではありません。 しかしながら、そこを乗り越えることで、新たな時代の自社の居場所が見つかるとも言えます。