はじめに
これをお読み頂いている経営者の方は、部下の方から、日々報告を受けていることと思います。
数字やらデータやら売上やら。PCでデータで上で共有しているならまだしも、紙でプリントアウトして、それを毎回見せられているとしたら、それを作っている時間で何かをできるのではないでしょうか。
もちろん、その報告書を渡されるだけではなく、当然説明を受けているかと思います。しかも、結構長い時間かけて。
何なら、会議室で毎週のように、会議を開いて報告会をし、何か仕事をした気になっている社員は少なくないかもしれません。
いろいろと問題点はあるのですが、今回は、「話を聞く」というところに注目して見ていこうと思います。
カウンセラーではない経営者による傾聴
実際のところ、毎回の会議や報告書で、満足のいく定点観測をできている方はいらっしゃるでしょうか?
正直なところ、数字で見ればわかるところに関しては、部下の方に報告書を作ってもらい、経営者の方が見れば、それで事足りるでしょう。
もちろん、そのデータの表現の仕方やグラフの描き方もありますが、報告をどのようにして聞くかも重要です。
経営者の中には勉強熱心な方もいて、カウンセラーの資格を持っている人も少なくないようです。
至る所で、カウンセラーの講座の受講募集があり、何十万と支払って、経営者の貴重な時間を費やして、そうした物を学んでいます。
でも、それって本当に必要なのでしょうか?
カウンセラーの講座の中では、「傾聴」ということが、よく指導されるそうです。
相手の話をよく聞いて、内容をまとめて、繰り返して・・・みたいなやつですね。
ただ、それで現状を変えることができれば良いのですが、実際のところ、それで現実を変えることができているか、疑問に思われている方も多いと思います。
現状を動かすことができていない要因には、あることが関係しています。このことについて、次の章で見ていきます。
世界は言葉で動かされる
さて、では、現状を動かすことができていない要因についてです。
まず、紙の報告書でも、デジタルのデータでも、担当者の意見でも、何らかの報告が上がってくると思います。
そして、そのデータの裏側や背景について、思考を巡らすのではないかと思います。
確かに、それで何かがわかることもあるかもしれません。
それで原因がわかれば、それで万事解決です。
でも、そうではないとすれば、理由はどこにあるのでしょうか。
それは、報告する人が、どのようなルールに縛られているかを鑑みていない部分です。
もっと言えば、言葉のルールに縛られていることに気がついてないからです。
なぜ、その言葉を使って報告させられているのか?
それは、報告者のどのような環境がそうさせているのかを、経営者は見なければなりません。
報告を現状を照らすものにしようとするならば、まず、その報告がどのような制限を受けて、自らの手元にやってくるのかを考える必要があります。
自由に考えるとは何か?
では、何かの要因が、報告者に制限をかけているとしたら、それを取り払い、自由にさせれば良いのではないかと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
でも、そもそも「自由」とは何なのでしょうか?
報告者が何の制限もなく、ただ適当に報告すれば、本当に必要な情報は得られるのでしょうか。
そうはならないですよね。
しかも、自由にやっていいよ、となった瞬間に、何をしたら良いか分からずに、ルールに縛られていた時以上に、必要な情報が見えなくなることすらあり得ます。
そう。自由には責任が伴い、自由が不自由を生み出すのです。
そのために、正確な情報を知る必要があるのであれば、正確な情報を流さざるを得ない、そうした仕組みの構築が必要になってきます。
社員に動いてもらう視点
そして、社員に動いてもらうには、社員のいる会社、会社の置かれている環境、環境を構成している状況と、抽象度を上げて考える必要があります。
社員を動かそうと思ったら、個々の社員をどう動かすかを考えるのではなく、その社員が属している会社、そして、その会社を含んだ環境を見ていかなければなりません。
理由は、社員の一人一人という部分を見ていても、本質的な問題の解決には至ることができないからです。
一部の社員が動いても仕方がありません。
会社の属する枠組みそのものを俯瞰してみることで、どのように考えれば、社員が自ら動くことができるような環境が整うのかを、全体として、考えていく必要がでてきます。
部分が積み重なって、全体ができるのではなく、全体が決まるからこそ、部分を動かすことができるようになります。
経営者の「聴く耳」とは?
ここまでくるとお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、聴くと見るは、近いところがあります。
どちらも、結局のところ、考える思考力がなければ機能しないという点と、そもそも視点が低いと、必要な情報は聞くことができないし、見ることもできないということです。
報告されたことから、どこまで言っていないことに思いを巡らせ、本質的な課題や問題点を導くことができるか。
これは、会社の代表である経営者にしかできません。
経営者の「聴く耳」とは、見えている「視点」に由来していることがわかります。
最後に
今回は、「傾聴」という視点から出発しましたが、話を聞くにしても、経営者は、報告が示していないことを見る目が必要になります。
そして、報告をする側の人間も、その報告をさせてしまうような環境の影響を受けていると言えます。
かといって、自由にさせれば問題が解決するわけではなく、どのような順序で、自らの手元にその情報はやってくるのか?
そして、その情報は、どのような制限を受けてそこにやってくるのか?
という視点について触れました。
社員は一人で構成している会社もあるかと思いますが、多くの場合は、その会社の社員が一人だったとしても、その会社を含む業界の中の一社として位置付けられているに過ぎません。
そのため、社内でどうとか、取引先との関係で見たところで、何も見つけることはできません。
全体を構成する要素はどうなっていて、その中で自らの会社はどのような立ち位置にいるか?
そうした視点に立って初めて、今まで見えてこなかった問題点が浮かび上がってくるものと言えます。