はじめに。

さて、今回のテーマは、「世界の隙間を編集する」です。

人によって、それぞれ「隙間」という言葉から、連想するイメージは異なっていると思います。

言葉の意味は、すれ違ったり、ずれたりしながら、大体合っていることを前提に、世界に存在しているので、人によって異なることはOKです。

ただ、今回取り上げていく、「世界の隙間の編集作業」こそ、ビジネスの本質の1つなのではないかと考えています。

そこで、今回は、世界がどうあって、ビジネスは成り立っているのか、という点について、考察をしながら、「世界の隙間を編集する」ということについて、考察していきたいと思います。

具体的な1つの事実が先か、それとも世界の存在が先か。

そもそもの話になるのですが、世界を形作っている要素として、言葉や物体など、さまざまなものがあるように見えます。

そうした物体や言葉が無ければ、世界はそもそも存在していないということです。

ですが、本当にそうなのでしょうか。

今の部分を、もう一度観察してみると、

「物体や言葉が無ければ、世界はそもそも存在していない」

つまり、1つ1つの物体や言葉があって、世界が成り立っていると思っているわけです。

でも、1つ1つの物体や言葉があったところで、世界そのものが無ければ、その1つ1つの物体や言葉は、存在できるのでしょうか。

このことからもわかるように、事実としては、具体的な1つ1つの物体や言葉があるから、世界が成り立っているのではなく、世界があるから、具体的な1つ1つの物体や言葉があると言えます。

言い換えれば、世界そのものが無ければ、具体的な1つ1つの物体や言葉は、そもそも存在していないということです。

どんなビジネスも「はじまり」の段階があった、という忘れやすい前提。

では、これが実際のビジネスと、どんな関係があるのでしょうか。

例えば、御社の現在の主たる事業は、どのようにして始まったのでしょうか。

現在では、業界での実績もあり、顧客企業に対して、大きな貢献をすることで、ビジネスとして成り立っていると思います。

ですが、どんな企業においても、必ず「はじまり」があったわけで、最初から現在のような立ち位置にあったわけではなかったと言えます。

では、「はじまり」の時期と、現在では何が違うのでしょうか。

それは、実績ですね。

「はじまり」の時期には、無かった実績が、現在に至るまでの顧客への貢献により、それが折り重なって実績となっています。

では、再度、ゼロから新規の事業を立ち上げる場合には、どのような状態になると言えるでしょうか。

これは2通りあって、今まで築いてきたブランドをもとに、新規に立ち上げる場合と、既存のブランドとは全く別の文脈にして、立ち上げる場合の2つです。

前者の場合は、実績ありの状態を引き継いでいるので良いとして、問題は後者の場合です。

今までの信用を引き継いでいないので、実績もゼロです。

成果を出すためには実績が必要だが、実績を積み上げるには成果が必要という矛盾。

ここで問題となるのが、「実績」という言葉についてです。

「実績」というのは、本業における成果を出してきた歴史とも言えますが、最初から「実績」がある状態など、世界のどこを見ても存在しません。

誰一人として、「はじまり」を避けて通ることはできないからです。

そして、ここにある種の矛盾があるのですが、「実績」を得るには、本業における成果が必要で、本業における成果を得るには、「実績」が必要であるという点です。

ここだけ見てしまうと、「実績」も本業における成果もない場合、何も生まれないことになります。

でも、実際には、そんなことはありません。

言葉と世界の曖昧さを理解することは、こうした具体的なことを考える際にも、つながってくると言えます。

大切なのは、知識を得ることでも、知識を編集することでもなく、情報を編集すること。

これは、ビジネスをするにあたって、何かを学ぶときにも同じことが言えます。

この章のタイトルの通り、知識を得るために何かを学んでも仕方がないですし、知識を編集しても仕方がありません。

ここでいう「知識の編集」とは、「誰だれが、こう言った」という知識の引き出しを、いくら持っていたとして、意味が無いということです。

もし本当にそれが必要なのであれば、「知識の編集」をした人の言葉を聞くのではなく、「知識の編集」をしている人の源泉になっている「知識」そのものに、自分自身でアクセスすれば良いからです。

そのため、「知識の編集」にしても、これから学者先生になるのであれば別ですが、ビジネスをしていくのであれば、不要であると言えます。

では、「情報を編集する」とは、いったいどういうことなのでしょうか。

無に有を見い出し、有に無を見い出す。

「情報を編集する」とは、この章のタイトルでもあるように、「無に有を見い出し、有に無を見い出す」ことです。

ここでポイントになってくるのが、「知識」ではなく、「情報」を編集するという点です。

どういうことか説明すると、1つ1つの「知識」を見ていても仕方がないということです。

これは、冒頭の部分でも説明しましたが、世界は1つ1つの存在によってできているのではなく、世界が存在することによってはじめて、具体的な1つ1つの存在があるということです。

同様に、世界の情報というのは、1つ1つの「知識」があるから、全体の情報があるのではなく、全体の情報の流れがあるからこそ、1つ1つの「知識」が存在していると言えます。

よって、見るべきポイントは、1つ1つの「知識」ではなく、全体の「情報」であって、「情報を編集する」という視点であると言えます。

おわりに。

ここまで、「世界の隙間を編集する」という視点から、実績と成果、知識と情報、そして編集という点について、記してきました。

お読みになって頂いた方のそれぞれが、「世界の隙間を編集する」ことを通して、世界をより良くすることができれば、それは再び、より大きな「世界の隙間の編集作業」が巡ってくることを意味します。

理由は、これまで見てきた通り、まず、より良くなった世界があって、各社の「世界の隙間の編集作業」あると同時に、各社の「世界の隙間の編集作業」があってはじめて、より良くなる世界がそこにはあるからです。