・カスタマージャーニーとは
・カスタマージャーニーの重要性
・BtoBとBtoCのカスタマージャーニーの違い
カスタマージャーニーを作成しようと考えているBtoB企業が知っておくべきことを全てまとめました。
カスタマージャーニーとは
「カスタマージャーニー」は日本語で「顧客の旅」という意味です。
簡単に言うと、顧客が商品やサービスの存在を知ってから購入するまでの流れを旅に例えたものです。
これを可視化した「カスタマージャーニーマップ」を作成する中で顧客についての理解が深まることで、適切で効果的なマーケティング施策を提案することができるようになります。
BtoB企業にとってのカスタマージャーニーの重要性3つ
この章ではBtoB企業にとってカスタマージャーニーが重要な理由をご紹介します。
①購入に至るまでのプロセスが複雑化している
②ビジネスモデルが多様化している
③購入後についても重視され始めている
購入に至るまでのプロセスが複雑化している
カスタマージャーニーが重要な理由として、顧客が購入を決めるまでのプロセスの変化が挙げられます。
近年はネットが普及したことにより、企業側が消費者へ自社をアピールする手段も、消費者が情報収集する手段も多様化しました。
つまり、消費者が商品の存在を認知し、購入に至るまでのプロセスが複雑化しているということです。
この中で適切なマーケティング施策を行うにはカスタマージャーニーを作成し、顧客の心理や行動を理解するのが有効です。
ビジネスモデルが多様化している
かつては商品やサービスを売ったらそれで終わりという、いわゆる売り切り型のビジネスが一般的でした。しかし、最近はサブスクリプション型のビジネスも広まり、ビジネスモデルが多様化しています。
ビジネスモデルが違えば、顧客のニーズや情報収集手段も変わるもの。
カスタマージャーニーは売り切り型以外のビジネスモデルでの顧客の心理や行動を理解するのにも役立ちます。
購入後についても重視され始めている
サブスク型のビジネスモデルが出てきたことで、企業のマーケティングの終点は「購入」だけにとどまらなくなりました。
その後の「利用」や「再購入」での顧客体験についても重視する必要性が出てきています。
カスタマージャーニーでは購入後のプロセスも扱うことができます。
BtoBとBtoCのカスタマージャーニーの違い4つ
この章ではBtoBのカスタマージャーニーがBtoCと異なる点をご紹介します。
①企業と個人の2種類のペルソナを用意する
②複数人が意思決定に関わる
③購入までのプロセスが多い
④タッチポイントの種類が異なる
企業と個人の2種類のペルソナを用意する
BtoC企業のカスタマージャーニーでは具体的な1人のペルソナを設定します。
一方で、BtoB企業のカスタマージャーニーでは企業と個人の2種類のペルソナを用意します。
まず、企業ペルソナを設定する理由として、BtoBでは企業間のやり取りになるため、企業という単位で抱えている課題を理解する必要があるからです。
ただし、実際に企業の中で働くのはそれぞれ背景の異なる一個人。
社員が抱えている課題やニーズは企業のものとは異なります。
そのため、担当者のペルソナも別で作る必要があります。
複数人が意思決定に関わる
BtoCとの大きな違いが意思決定に関わる人数です。
BtoCでは購入を検討する際に基本的に顧客のみが意思決定に関わります。
一方で、BtoBの場合、企業の予算を使用するため、購入が決まるまで多くの人が関わります。
購入までのプロセスが多い
認知から購入までのプロセスは様々なルートがありますが、BtoBはBtoCよりもフェーズが多いのが一般的です。
なぜなら、社内会議や稟議書の提出といったプロセスを経るためです。
タッチポイントの種類が異なる
タッチポイントとは「顧客接点」とも言われ、企業と顧客とが接する機会のことを指します。
例えば、
- テレビCM
- WEB広告
- オウンドメディアサイト
- SNS
などです。
BtoB企業のタッチポイントはBtoCと同じものも多くありますが、「営業担当者」がタッチポイントの1つになるのは大きな違いです。
カスタマージャーニーが「古い」と言われる理由
カスタマージャーニーは「古い」と言われたり、現代のマーケティングでは使えないという声が上がることもあります。
その理由としては、近年、ネットが普及し、顧客がこれまでにはなかった量の情報に触れる社会になり、商品を認知し、購入するまでのプロセスが複雑になったことが挙げられます。
また、購入を検討する際、比較検討をしたものの、また情報収集のプロセスに逆戻りし、再度、比較検討をする例があり、必ずしも顧客が購入までのプロセスを順番に辿らないことも理由として挙げられます。
しかし、だからといってカスタマージャーニーが古くてもう使えないツールというわけではありません。
顧客の行動が複雑化しても、基本的に辿るフェーズは変わりません。
そのため、カスタマージャーニーマップを作成しながら、各フェーズにおける顧客の視点やすべき施策を考えることは今でも有効であると言えます。
カスタマージャーニーをマーケティング施策に使うメリット6つ
この章ではBtoB企業がカスタマージャーニーを作成するメリットをご紹介します。
①顧客への理解が深まる
②社内での共通認識ができる
③意思決定のスピードが速くなる
④マーケティング施策の優先順位が明らかになる
⑤顧客体験の質が高まる
⑥現在のマーケティング施策の有効性を判断できる
顧客への理解が深まる
カスタマージャーニーマップを作る過程で顧客の思考や行動を深掘りするため、マップを作らない場合に比べて、より顧客の立場になって施策を考えるようになり、効果的なマーケティング施策を提案することができます。
このメリットを最大化するには顧客の思考や行動を正確に理解することが大切です。
「恐らくこんなふうに考えるだろう」という憶測ではなく、データや実際の声を収集し、分析しましょう。
社内での共通認識ができる
カスタマージャーニーマップを作ると社内で共通認識ができます。
マップを作る際、顧客のペルソナを決め、思考や行動を可視化するためです。
BtoB企業では商品やサービスを顧客に届けるまでに、営業部門、商品開発部門、広報部門など、多くの部署が関わります。
もし、顧客への認識がそれぞれ異なっていると、顧客接点での顧客の満足度は下がってしまい、施策の効果を最大化できません。
一方で、共通認識があれば、それぞれの部署の担当者が同じ方向を向いて行動するため、施策の効果が高くなります。
意思決定のスピードが速くなる
顧客に対する認識が共有されていることで、社内の意思決定のスピードが速くなるメリットもあります。
ビジネスのトレンドや市場のニーズはものすごい速さで変化しています。
BtoB企業が業績を安定させるには、それに遅れを取らずに対応することが不可欠だからこそ、意思決定のスピードが速くなるのは大きな強みになります。
マーケティング施策の優先順位が明らかになる
カスタマージャーニーマップによって顧客の考え方や行動が明確になると、どのマーケティング施策を優先して取り組むべきかが分かります。
BtoB企業ではマーケティングにおいて様々な施策を行います。
これらを優先順位の高いものから取り組めば結果が出やすくなります。
現在のマーケティング施策の有効性を判断できる
これから行う施策だけでなく、これまで取り組んできたマーケティング施策についても客観的に評価することが可能です。
想定する顧客に対して効果的だと判断されるものはそのまま続ければ良いですし、反対に、あまり効果的でないと思われるものは中止し、より効果的な施策を新しく始めることで、効率的にマーケティングを行うことができます。
顧客体験の質が高まる
カスタマージャーニーマップをもとにタッチポイントでの顧客体験を設計すれば、良質な体験を提供することができます。
タッチポイントでユーザーの課題やニーズに対して適切なメッセージを発信することができれば、比較・検討のフェーズで優位になりますし、「この企業に相談してみよう」と思ってもらいやすくなります。
カスタマージャーニーマップの仕組み
カスタマージャーニーマップには縦軸と横軸の2つがあります。
それぞれどのようなことを書くのかを解説していきます。
縦軸では顧客理解に必要な項目を設定します。
縦軸
何を入れるかは自由ですが、例としては次のようなものがあります。
- 行動
- 思考・感情
- タッチポイント
- 施策
横軸
横軸には顧客が商品やサービスを認知してから購入するまでのフェーズを設定します。
代表的なものとしては
- AIDA :Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Action(購買行動)
- AIDMA: Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求) →Memory(記憶)→Action(購買行動)
- AISAS: Attention(注意)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(購買行動)→ Share(情報共有)
などがあります。
これらとは異なる独自のフェーズを設定しても問題ありません。
カスタマージャーニーマップの作り方8つの手順
この章ではカスタマージャーニーマップの書き方を8つのプロセスに分けてご紹介します。
①カスタマージャーニーマップを作る目的を設定
②ペルソナ設定
③フェーズ定義
④行動を整理
⑤思考・感情を整理
⑥タッチポイントをまとめる
⑦行動・施策をまとめる
⑧テンプレートにまとめる
カスタマージャーニーマップを作る目的を設定
まずはなぜカスタマージャーニーを作るのかという目的を設定します。
なぜなら、目的が違えばカスタマージャーニーの作り方も変わるためです。
目的をはっきりさせれば、達成するためにより効果的な方法を導くことができます。
- 業績アップ
- 契約率アップ
- 顧客満足度を上げる
など、目的は企業によって様々です。
目的はマップ作成に関わる全員で必ず共有しましょう。
ペルソナ設定
ペルソナとは元々は「仮面」という意味ですが、マーケティングでは自社の商品やサービスを利用する架空のユーザー像のことを指します。
カスタマージャーニーを作る際はペルソナを設定し、そのターゲット像をもとにマップの項目を埋めていきます。
先ほどもご説明したように、BtoB企業のカスタマージャーニーのペルソナは企業と個人の2種類を作ります。
設定する項目の例は後ほどご紹介します。
フェーズ定義
フェーズとは先ほど紹介したように、カスタマージャーニーマップの「横軸」に入れるもので、顧客が商品やサービスの存在を認知してから購入するまでのプロセスを設定します。
フェーズの例については詳しくは後ほど解説します。
行動を整理
各フェーズにおいてペルソナがどのように行動するのかを整理します。
例えば、認知のフェーズの行動の例としては
- 展示会で企業ブースを見た
- インターネットで検索した
などが想定されます。
思考・感情を整理
各フェーズでのペルソナの思考や感情を洗い出します。
目に見えるものではないため、想定するのが難しいかもしれません。その場合は
- 既存顧客にインタビューする
- 営業担当者にヒアリングする
といった方法をとり、生の声を集めるのがおすすめです。
自分達にとって都合が良いように設定してしまわないように気をつけましょう。
タッチポイントをまとめる
タッチポイントとは企業と顧客との接点のこと。
フェーズごとにタッチポイントの種類は異なります。
BtoB企業のタッチポイントの例としては次のようなものがあります。
- テレビ
- マス広告
- WEB広告
- 雑誌
- ネット検索
- SNS
- メルマガ
- 展示会
- セミナー
- 営業担当者
施策をまとめる
整理したペルソナの行動や思考をもとに顧客体験を高めるための施策をまとめます。
施策は一度決めたら絶対に変えてはいけないものではなく、実行した結果を見て修正したり、変更していきます。
テンプレートにまとめる
ここまで整理した内容をカスタマージャーニーマップに反映し、項目を埋めていきます。
全体が埋まったとき、他に比べて手薄に感じるところがあれば、追加で話し合いを行いましょう。
カスタマージャーニーのフェーズの例8つ
この章ではカスタマージャーニーマップに入れるフェーズの例をご紹介します。
①認知
②情報収集
③比較・検討
④意思決定
⑤稟議・決裁
⑥購入
⑦利用
⑧再購入
認知
企業の商品やサービスの存在を知るフェーズです。
ターゲットに自社やサービスの存在を知ってもらうための施策が必要です。
このフェーズではペルソナは企業の存在を知っているだけで、興味は深くない状態です。
情報収集
抱える問題を解決するため、役に立ちそうな商品やサービスを調べる段階です。
ここでは自社の商品やサービスが解決に役立つことを知ってもらうことが鍵になります。
このフェーズでは企業の公式サイトや資料の内容を充実させておくといった施策が考えられます。
比較・検討
課題を解決するのに役立ちそうな商品やサービスを比較して、最適なものを導き出すプロセスです。
競合と比較されるため、自社についてより詳しい情報を提供したり、他社と比較した際の強みをアピールするのが効果的です。
意思決定
個人のペルソナが購入・契約を決めるフェーズです。
このフェーズでは企業の営業担当者との商談がタッチポイントの1つとなります。
稟議・決裁
BtoB企業のカスタマージャーニーでは稟議・決裁に関するフェーズが必要です。
なぜなら、個人が「このサービスが有効だ」と思っても、実際に導入するかどうかを決めるのは企業だからです。
購入
会社の承認が得られた後で購入をするフェーズです。
ここでは改めて契約内容を担当者と確認します。
利用
商品やサービスの購入後、実際に使用するフェーズです。
顧客は課題を解決できるかどうかを確かめます。
ここではサポートを充実させたり、使い方を深く知ることができるコンテンツを用意したりして、顧客体験を高めましょう。
再購入
顧客が再購入するか、サービスを継続するかを検討する段階です。
競合他社と比較・検討されることもあるため、その中で優位に立てるよう、顧客の満足度を高めておく必要があります。
BtoB企業がカスタマージャーニーマップを作るときの注意点5つ
この章ではBtoB企業がカスタマージャーニーを作るときに注意すべきことをご紹介します。
①顧客のニーズを徹底的に深掘りする
②マップに主観を入れない
③見込み客にインタビューする
④各部署が集まって作成する
⑤細かい部分にこだわりすぎない
顧客のニーズを徹底的に深掘りする
まず、顧客のニーズは徹底的に掘り下げましょう。
なぜなら、顧客について理解を深めることで、各タッチポイントで適切なメッセージを届けることができるからです。
顧客体験の質が高まれば、競合他社よりも関心を持ち、選ばれる確率が高くなるでしょう。
顧客を正しく理解することはカスタマージャーニーで特に重要なことの1つなので、力を入れましょう。
マップに主観を入れない
カスタマージャーニーマップを作るとき、主観を入れないように気をつけましょう。
なぜなら、「多分こうだろう」という根拠のない内容を入れると、現実とかけ離れてしまい、効果的な施策を導き出せないからです。
主観を入れないためにはデータや顧客の生の意見をもとにした内容をマップに書き込むのがポイントです。
見込み客にインタビューする
顧客について正しく理解するためにおすすめなのは見込み客や既存の顧客にインタビューをすることです。
これから顧客になり得る人や、かつて見込み客として課題を抱えていた人達の生の声があれば、マップを作る際に非常に役立ちますし、プロジェクトに関わる人の主観が入ることを防げます。
また、データからは分からないリアルな声を聞けるというメリットもあります。
各部署が集まって作成する
カスタマージャーニーは各部署の人間が集まって制作するのが理想的です。
なぜなら、共に顧客について理解を深めることで、部署間で共通の認識を持つことができるからです。
共通の認識があれば、施策を行う際に同じ方向を向いて取り組むため、効果が出やすくなります。
また、社内の意思決定のスピードが速くなるというメリットもあります。
細かい部分にこだわりすぎない
カスタマージャーニーマップを作る際は「完璧な内容にしなければ」と思って細かい部分にこだわりすぎないようにしましょう。
マップを作るときに大事なのは、特に重要なタッチポイントを見極め、有効な策を考えることです。
また、カスタマージャーニーは様子を見ながら作り替えたり、ブラッシュアップしていくものなので、最初から完璧なものを目指さないようにしましょう。
カスタマージャーニーのペルソナの項目例
この章ではBtoB企業のカスタマージャーニーのペルソナを作る際に入れるべき項目の例をまとめました。
企業ペルソナ
- 業種
- 商品やサービス
- 売上
- 従業員数
- 企業風土
- ニーズ
個人ペルソナ
- 名前
- 属性
- 居住地
- 勤務先
- 勤務先でのポジション
- 家族構成
- 世帯年収
- 性格
- 趣味
- 休日の過ごし方
- 情報収集方法
- ニーズ
- 思考
- 行動
カスタマージャーニーマップを最大限活用するコツ4つ
この章ではBtoB企業がカスタマージャーニーマップを最大限活用するために必要なことをご紹介します。
①ペルソナごとにカスタマージャーニーマップを作る
②ToDoリストを作る
③カスタマージャーニーの効果を測定する
④カスタマージャーニーを定期的に見直す
ペルソナごとにカスタマージャーニーマップを作る
ペルソナを複数作る場合、ペルソナごとにカスタマージャーニーマップを用意しましょう。
なぜなら、人が違えば認知から購入・再購入までの道のりも変わるからです。
特にBtoB企業の場合、クライアントは企業なので、ターゲットごとに役職や権限の大きさが異なり、様々な購入パターンが考えられます。
特に見込み度の高いペルソナからマップを作成していきましょう。
ToDoリストを作る
マップが完成したらToDoリストを作りましょう。
なぜなら、カスタマージャーニーマップは作るだけでは意味がなく、そこから導き出した施策を実行して初めて結果に繋がるからです。
そこで、マップを作る中で提案された施策を実行するために必要なタスクをリストアップし、行動に移していきましょう。
カスタマージャーニーの効果を測定する
カスタマージャーニーの作成後に行ったマーケティング施策の効果を測定しましょう。
効果が高いものはそのまま続け、効果があまりなかったものについては原因を調査し、改善策を考えましょう。
これを繰り返すことによって、効果の高い施策を行えるようになります。
カスタマージャーニーを定期的に見直す
カスタマージャーニーマップは一度作ったら終わりではなく、必要に応じてブラッシュアップすることで、より効果的な施策を導き出すことができます。
特に、近年は様々な分野において変化が激しく、
- ターゲットが自社を認知する方法がさらに多様化する
- 購入までのプロセスが複雑化する
といったことが起こる可能性は非常に高いです。
そこで、カスタマージャーニーを見直す機会を定期的に作りましょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップを作り、ターゲットが商品を認知してから購入するまでのプロセスを理解することで、ターゲットに対して適切なメッセージを発信することができるようになり、業績アップに繋がります。
ただし、マップは作るだけでなく、そこから効果的な施策を考え、実践し、効果を測定することが大事です。
質の高いカスタマージャーニーマップを作成し、マーケティングに活用しましょう。