専門のコンサルタントが、部分の改善に止まってしまう理由。
例を挙げると、営業コンサルタントがいるとしましょう。この人にお願いすると、営業については、確かに改善が見られます。
でも、問題の原因は、本当に営業だけと言えるのでしょうか。
そもそも、ある問題があって、その問題の元凶となっていることは、1つとは限りません。
多くの場合、幾重にも積み重なって、現在の不振を招いていることが大半です。
なのに、例に挙げた専門しか見えていない営業コンサルタントのような人に、頼んでしまうとどうなるか。
営業しか改善されません。もしくは、営業部分すらも解決できないかもしれません。なぜなら、本当の問題は、そこだけではないからです。
何層にも積み重なった問題の種を、ひとつずつ解きほぐすような、そういった発想が必要なのです。
自社の問題に対し、「仮説を立てる」という間違った方法。
しかしながら、こういった発想に至るのは、コンサルティングをする側にも、受ける側にも、難しい部分があります。
理由は、双方とも、問題があるからには、明確な原因があって、解決のための答えがあると考えているからです。
なので、これが原因だと考えて、答えを導いたとしても、それが合っているかもしれませんし、間違っているかもしれません。
ただ、より重要なのは、答えがどこかにあると考えることよりも、根本的に、どんな手を打たなければならないかと考えることです。
なぜなら、答えを探すことよりも、どんな問いを立てるか、のほうが大切だからです。
ちなみに、ビジネス書などで出てくる、「仮説を立てる」や「仮説思考」という言い方に似ているように感じるかもしれません。
けれども、ここで述べているのは、そういうことではありません。
理由としては、「仮説」にまつわる考え方には、自分で立てた「仮説」に対し、答えを探すために試行錯誤するという、あたかも唯一無二の答えがあるかのような考え方をしているからです。
そもそも「仮説」を正確に、検証することなどできません。
それは、立てた「仮説」が、極めて曖昧なものだからです。
その「仮説」を形作る、言葉をどんなに慎重に選んだとしても、それが他者に正確に伝わることは無いからです。
そして、「仮説」の検証に関しても、同様です。
「仮説」の検証し、その答えらしきものを見つけたとしても、例外が出てくる可能性を消すことはできず、その検証が正しいものであるかどうかすら、常に疑わしいものだからです。
そのため、こういった考えを踏まえつつ、自社の問題について、複合的に考えていく必要があるのです。
社長だけではなく、社員にも不可欠な、本当の原因を探る視点。
コンサルタントから直接、指導を受けるのは、社長だけ、という場合もあります。
そして、指導を受けた社長から、社員が考え方を学ぶという流れになるかと思います。
社長だけ分かっていて、社員が把握していないと、結局のところ、会社全体の流れは、変わらないからです。
最終的な会社の方針は、社長が決めます。でも、同じくらい、社員にも、全体を見渡した上の判断が求められるのです。
理由は、全体の見取り図を持っている人が増えれば、同じ視点から、違った考えが生まれるかもしれないからです。
自然界の仕組みを例にすると、自然界には、突然変異の仕組みがあります。
この仕組みがあるのは、環境の変化に対応することができるようにするためです。
会社の話に戻すと、社長が最終的に決めるとしても、会社に多様性を含ませておけば、それだけ生き残る可能性が高まると言えます。
会社内の多様性は、環境の突然変化に対抗する、突然変異の仕組みに似ています。
自然界において、脈々と受け継がれてきた仕組みは、会社を取り巻くビジネスの環境においても役立つ視点であると言えます。
ダイバーシティを掲げている企業は、グローバル企業だから、とか、国際化の時代だから、掲げているわけではなく、そうしたほうが、会社にとって利益となるから、掲げているのです。
全体を見渡して、最適化できるリーダーの訪れ。
会社の中で、全体を見ることができる人を育てると、社長にとっては、脅威となるのではないか、という人がいます。
社長自らと同じ視点を持っているわけですから、それだけ危険なのではないかと考えている見方です。
けれども、その社員が会社のために建設的な批判をしているのであれば、その耳の痛い話を聞いておく必要があります。
もちろん、その建設的な批判の理由や背景も聞く必要があります。
また、社長しか知らない会社を取り巻く事情もあると思います。
そのため、その社員が言った意見の言っていない部分を、社長自ら類推してとらえる必要も出てきます。
今見てきたように、本当の脅威は、見えている社員に批判をされることではなく、環境の変化や会社の置かれた危機を見落としていたことで、会社が窮地に陥ることです。
その会社に属していて、会社に危機が迫ることを望んでいる人はいません。
けれども、社内において、会社や社長に対して、批判的な意見を言える人物を育てることも難しいのが現状です。
多くの場合、批判的な意見を言ってくれてありがとう、とはならず、左遷や排斥の対象となるからです。
そこまでして、会社に対して、警鐘を鳴らせる社員は、そう多くはないでしょう。
だからこそ、わざわざ外部からコンサルタントを招き、全体を見渡しながら、会社の現状と今後の対策について、協議していくのです。